足羽山の四季を感じながら、お茶屋さんでひと休み。
JR福井駅に近い中心街で、豊かな自然を感じることができる足羽山。木漏れ日を浴びながら坂道をのぼっていくと、福井の市街地を一望する『大久保茶屋』に辿り着きます。
『大久保茶屋』は創業昭和6年。「『大久保茶屋休憩所』として祖父母が開業し、両親がお花見処として受け継ぎ、今は私たち夫婦がメインで切り盛りしています」と語る伊藤晶代さん。
足羽山公園内に位置する『大久保茶屋』は、昔も今も人々の憩いの場所。約3500本の桜が咲く春はもちろん、初夏は紫陽花、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々の景観が楽しめます。
「昔から、お茶屋は日常的な気取らない場所。ここで過ごした共通の想い出がある地元のお客さまが、3世代で来られることもあります。最近は、外国人のお客さまも多いですね」。
混雑する桜の時期を避け、春以外に来られるお客さまもいるのだとか。「例えば空気の澄んだ冬は、山の木立が落葉し、まちを蛇行する足羽川から遠く坂井市まで見晴らせます。足羽神社や黒龍神社などのパワースポット巡りで、ひと休みされるお客さまも増えています」とほほ笑みます。
足羽山と福井の名物を盛り込んだ、特別なセットも。
『大久保茶屋』ならではの『こんにゃくおでん』と『とうふ木の芽田楽』は、足羽山の名物メニュー。花見シーズンはもちろん、年間通して創業当時から変わらぬ味わいが愛されています。
茹でたこんにゃくに味噌の和がらしがピリッと効いた『こんにゃくおでん』。豆腐に甘みのある味噌をのせて焼き上げた山椒が香る『とうふ木の芽田楽』。「どちらも、ここでしか食べられない福井のソウルフードです」と伊藤さんは語ります。
「お豆腐はやわらかさにこだわって、地元のお豆腐屋さんに作ってもらっている田楽用の特注品です。おでんの和がらしは県産のからし種を練ったもので、独特の辛味がクセになります」。
ちょっと一息つくときにうれしい甘味も充実。ふんわりやわらかな『黒蜜よもぎきなこ団子』やぷるぷるの『黒糖わらびもち』、とろりと甘い『わらびドリンク』なども人気です。
そんな自慢の一品がすべて楽しめる『おそばセット』をはじめ、北陸新幹線延伸開業にあわせ福井名物を盛り込んだ『福のセット』も登場。日本酒も、選りすぐりの福井の地酒が揃っています。
ワークショップも開催、楽しみながら長く続けていく。
風を感じ星を眺める屋外のテーブルや縁台席でのんびりするか、懐かしいレトロな和の雰囲気に癒やされる店内でくつろぐか。屋内外合わせて最大100座席の中から、気分にあわせて席を選べるところもお茶屋ならではの魅力です。
「築50年になる建物を、自分たちで何度か改装してきました。古くて愛着の湧くものが好きで、古物屋さんで集めた古道具も室礼に使っています」と伊藤さん。陶器には県内の『金津創作の森』で活躍する作家さんの陶器を使うなど、福井を感じさせるモノにもこだわっています。
居心地のいい落ち着いた空間を生かし、さまざまなイベントなども開催。「『桜染め』をしている母が染めもののワークショップをしたり、知り合いの作家さんが苔玉の展示会をしたり。アートと地のものを掛け合わせるなど、文化的な活動もしていきたい」と語る伊藤さん。森の中にある離れのカフェ『森の音』では、「足羽山ラボ」によるイベントなども開いています。
「これからもずっと長く続けていくために、自分たちがひとつひとつを楽しみながら取り組むことで、お客さまにも楽しんでいただけたら」と笑顔が花開きました。