買うだけじゃない!職人技を体験して、文化を知る。
江戸時代に北海道~大阪間を往復していた北前船の寄港地だった敦賀は、日本海側の特産品が集まる湊町として栄えました。その積み荷だった昆布は敦賀の地場産業となり、その中で生まれた「おぼろ昆布」は、現在でも全国生産量の8割以上を占めています。
そんなおぼろ昆布の一大生産地にあって、職人による手すきの実演がいつでも見られるのが『おぼろや』です。昆布の上を滑らかに走る包丁が、薄く柔らかなおぼろ昆布を生み出していく様子はなんとも鮮やか。手早く、しかも均一な仕上がりはまさに職人技です。
こちらでは体験コースも用意されており、実際に昆布を削ぐことができます。HPから体験予約ができますが、枠が空いていれば当日の飛び込みもOK。言葉では伝えきれない、繊細な感覚の世界が体験できます。
『おぼろや』では、看板であるおぼろ昆布だけでも4種類の取り扱い。削る部位で味わいが異なるため、用途や料理によって使い分けるのがポイントです。
他にも、だし昆布や佃煮、塩昆布はもちろん、バリエーション豊富な昆布飴やおやつ昆布など、直営店ならではの製品がずらり。試飲・試食も豊富に用意されていますので、思いがけぬ出合いを楽しみながら自分好みの一品を見つけてみてください。
確かな技があるから、新しい味わいを作り出せる。
ところで、店名にもなっている「おぼろ」ですが「とろろ」との違いはご存じでしょうか。
答えは製法にあります。幾重にも重ねてブロック状にした昆布の断面を、機械で削って作るのがとろろ昆布。それに対し、一枚の昆布の表面を職人が専用の包丁で削りだして作るのがおぼろ昆布です。
一枚一枚丁寧に手すきで削り上げていくため一日の生産量にも限りのあるおぼろ昆布ですが、向こうが透けて見えるほど薄く削られた昆布は空気のように軽く、口に入れた瞬間に溶けるようにほぐれていきます。幅広に仕上げられるため昆布の旨味をダイレクトに感じることができるのも、長年愛され続けている理由と言えるでしょう。
その味わいを極めたのが、昆布専門店のこだわりを詰め込んだ「おぼろ月夜」。一等検と認められた天然物の羅臼昆布の旨味を、地元若狭のまろやかな酢を使うことで最大限に引き出した極上品です。一口食べればその差は歴然。昆布の甘味も強く、大切に大切に食べたくなる味わいです。
おぼろ昆布を贅沢に佃煮にした「おぼろでおむすび」も専門店ならではの一品ですので、ぜひ併せてご賞味ください。
おぼろ昆布のふるさとだからこそ、伝統も進化も大切にしたい。
「おぼろ昆布は、敦賀の日常に寄り添ってきたもの」と話すのは代表の森田さん。「敦賀の人達の運動会や遠足のお弁当に入ってるおにぎりに巻かれてるのはおぼろ昆布なんですよ。そういうちょっとした日常の記憶が、味を繋いでいくんだと思います」。
今後は、おぼろ昆布を初めて知る人にも気軽に手を伸ばしてもらえる商品を手がけたいのだとか。「おぼろ昆布で佃煮を作ったので、次は甘く出来ないかなと。そうすればパンのお供にもできるし、製菓にも使えるかもしれない。より身近な食材になれる道を探します」と笑います。
旨味の塊である昆布は、少し加えるだけで他の料理の味わいも深めてくれる立役者。まだまだポテンシャルを秘めている食材に惹かれた方は、ぜひ『おぼろや』へお立ち寄りください。ここには、味も歴史も奥深い昆布の世界が広がっています。