アプローチを通れば高まるお料理への期待。
歴史ある風情を感じさせる福井市浜町に佇む『和の食 忠兵衛』。間口が狭く奥に長い『うなぎの寝床』といわれる京都の家屋を思わせるエントランスは、昼と夜でがらりと表情を変えます。店内は縁起が良い『褐色(かちいろ)』の紺色を基調に、越前和紙、河和田の漆器、若狭の塗箸など、福井の伝統工芸を積極的に取り入れています。
店主の山田祐士さんは、京都で日本料理を15年間学び、そのうち6年間は京都を代表する料亭『和久傳(わくでん)』で修行を重ねました。「本格的な京料理を基本としながら、福井の塩、醤油、味噌の調味料や食材、技法を取り入れて、気軽に楽しんでいただけたらと思い、浜町で店を始めました。おだしをきかせて食材の味を引き出していく本場の料理を目指してます。」と山田さん。「例えば〝蕪ってこういう味なんや〟という風に、野菜そのものの味がきちんとでているものが滋味深く、美味しいと思います」と信念を語ります。
素材の旨みを引き出す、京都仕込みの本場の味。
店名の「和」という言葉には、「食事をすることによってその場の空気が〝和む〟空間を提供できるよう」という想いがあるのだそう。「日本には四季があり、その時期のものが美味しいと修行中に感じたので、魚も野菜もその季節にしか味わえないものを召し上がっていただけたら」と言います。
会席は月替わりで素材を活かした献立となっています。一品料理は女性に人気の『生麩田楽』をはじめ、『うなぎ白焼き』、『鱧(はも)』、『のど黒』など旬の食材が並びます。「魚はどこでもとれますが、福井は漁港が近いのでお店に入ってくるまでの時間が早く、新鮮さが違う」と自信をみせます。
白ごはんのコシヒカリは、山田さんの出身地の大野産米を使用。「同じお米でも炊飯器で炊くのとでは全然違う」と、毎日土鍋で炊き上げています。「あくまで料理ありき」というお酒のセレクトは、秋田や富山など全国各地の名だたる日本酒が勢ぞろい。最近は、お客さまからのリクエストで福井の地酒も増えているそうです。
四季を大切にした〝和の食〟を気軽に楽しむ。
修行時代に修得した『鯖寿司』はテイクアウトも行っており、特に人気だそう。濃口醤油で炊き上げたシャリは、絶妙の塩梅で〆た肉厚の鯖と好相性。「ただ、年末から3月にかけての脂ののった時期にしかおすすめしていません」と、こだわりを貫きます。
ランチ、昼・夜の会席ともに、予約が必要。「お昼の営業はランチと会席それぞれ料理や席の形態が異なるため、どちらか先にご予約をいただいた料理のみの営業となります。」と山田さん。
ランチを利用した女性客が、ご主人やご家族を連れて夜の会席に訪れ、料理を満喫したご主人が次は仕事関係で通うなど、「ランチからつながっていくお客さまも多いですね」とニッコリ。月に何度も来られる方には会席の献立をその時々で変えるなど、細やかな心尽くしも人気の秘密のようです。