歴史ある松永の自然の中で、ゆるりと五感をひらく。
JR小浜駅から車で約15分ほど走ると、美しい山に囲まれ、のどかな田んぼの風景が広がる小浜市松永に着きます。この地は平安時代の古文書「続日本書紀」に記されているほど歴史が深く、豊かな自然の中に国宝 明通寺をはじめとする数多くの文化遺産が息づいています。
『松永六感 藤屋』は、そんな松永の自然に抱かれた5部屋限定の小さな宿。松永に咲く季節の花の名が付けられた部屋は、それぞれ広さや室礼が異なり、窓から庭や滝を眺めてくつろぐことができます。薪ストーブと囲炉裏のあるラウンジには、「五感をひらく」をテーマにしたライブラリーも。ほど良い距離感の中で、思い思いのひとときを過ごすことができます。
「ここは松永の自然に根づいた食、人、文化を通して、五感を整えるリトリートの空間です。地域に脈々と受け継がれる自然や文化を体感することで、五感をひらいたその先にある、言葉にはできないものを感じていただけると思います」と、代表の御子柴北斗さんは語ります。
自分で収穫する精進料理。朝ごはんは国宝 明通寺で。
『松永六感 藤屋』の広い敷地には、年間通して200種類以上の季節の野菜やハーブを栽培する『藤屋ファーム』があります。宿泊者はファームを自由に散歩でき、自分が夕食でいただく野菜やハーブの収穫を体験。土を踏み、手で摘み、香りを嗅ぎ、五感を刺激しながら採ったみずみずしい野菜やハーブを使った精進料理は、身体と心を満たすような不思議な力が感じられます。
「野菜中心のお料理になっていますが、山あいの大地と清らかな松永の水で育てられた季節の恵みは、滋味にあふれ栄養もたっぷりです。素材本来の美味しさを引き出しながら、精進料理のイメージをくつがえす華やかな彩りも魅力。山海の自然に恵まれ、京の食文化を支えた小浜の歴史にも触れていたけるよう、最近は若狭ぐじもお出ししています」と御子柴さんはいいます。
朝食は、宿の近くの国宝 明通寺へ。朝霧の森を抜け本堂で瞑想を体験した後、境内の客殿で朝粥と精進弁当をいただきます。静寂の中で、風の音や鳥のさえずり、清流のせせらぎに気づくことができるように、本来の自分へ戻っていくような心洗われる清々しいひとときです。
歴史、人、自然に触れ、自分を解放していく時間と体験。
この土地ならではの食を味わった後は、地元の自然や人々と触れ合い「五感をひらく」体験へ出かけませんか。征夷大将軍として知られる武将 坂上田村麻呂が平和を願って建立したとされる明通寺では、瞑想の他に写経を体験することができます。さらに、「小浜は山間に多くの寺院があり、拝観を受け入れている寺を巡る『小浜八ヶ寺巡り』も楽しめますよ」と御子柴さん。
また、松永の集落では、創業300年になるお酢醸造所を見学したり、旧小学校跡の家具工房で木彫皿を作ったりすることもできるそう。四季折々の風景を散策するトレッキング体験では、若狭湾にそそぐ川の源流を遡ることも。山腹の分水嶺からは、小浜のまちと日本海が一望できます。
「若い世代からシニアまで、日常から離れる時間をつくりに来られ、女性のひとり旅もけっこういらっしゃいます。何度も足を運んでくださるリピーターの方も多いですね。今後は、海外に向けても、松永という土地の魅力を発信していきたいです」。非日常の世界で自分を解放する時間と体験は、国境を越え、言葉を越え、今を生きる人たちの心に響き、明日への活力を育みます。