心の泥を沈めていく〝気づき〟の『坐禅会』。
近年、心と身体のリフレッシュに坐禅が注目されています。緑と静寂に包まれた萬松山『大安禅寺』では、毎月第2・第4金曜日19時から『坐禅会』を開催。姿勢を調え、深く呼吸し、心を落ち着かせることで、前を向くきっかけや幸せへの〝気づき〟を得られると話題です。
副住職を務める高橋さんは、「私たちの迷いを濁った水に喩えるならば、静かに坐ることで濁った水が沈殿し、 クリアになった心で目の前の事実としっかり向き合っていく時間が坐禅です。 しかし、泥は底に溜まり無くなったわけではありません。 大事なのは、その泥のように迷いも私たちの一部であると受け止めること。 そして、また混ぜて濁らせているのも私自身であると気付くことが大切です。」と説明してくれました。
『坐禅会』の参加費は、大人も子どもも1回400円。予約が必要で、初めて坐禅をする人は30分前に集合し、事前に説明を受けます。昨年から、毎週日曜日朝6時半からZoomでの『オンライン坐禅会』もスタート。時間があわない人のために、Youtubeでの配信も行っているそうです。
江戸時代にタイムトリップできる『千畳敷』。
萬松山『大安禅寺』は、江戸時代の万治元年(1658)、第4代福井藩主松平光通公が越前松平家の永代菩提所として建立した臨済宗妙心寺派の寺院です。約360年の長きにわたって祈りの心と共に受け継がれてきた寺院建築は、国の重要文化財に指定されています。
高橋副住職が「ぜひ見てほしい」と語るのが、境内から約300mほど登ったところにある歴代福井藩主の廟所である通称『千畳敷』です。日本一の大名墓とされ、約4mの巨大な墓石から、『千畳敷』のいわれとなる1360枚の敷石や門扉まで、すべて福井産の笏谷石が用いられています。
「笏谷石でつくられた廟所が100年以上の歳月を経ても風化することなく、そのまま残っている。江戸時代にタイムトリップするような場所なんですよ」と語る高橋副住職。これだけ多くの笏谷石をいったいどうやってここまで運んできたのか…、歴史の謎とロマンが感じられます。
人と自然が調和する花の寺。
坐禅以外にも、和尚さんの生き生き法話や写経、四季の食材を使った精進料理も堪能できる『大安禅寺』。花菖蒲や1千株の紫陽花と百種類の薔薇が楽しめる“花の寺”としても知られていて、 初夏には境内に季節の花々が咲揃い、参拝される方々を迎え入れてくれます。 喧騒の世を離れ、人と自然が一つになれる大安禅寺には県内外から多くの人が訪れます。
現在、『大安禅寺』の寺院建築は、12年におよぶ〝令和の大修理〟の真っ最中。平成30年(2018)に始まった解体工事は6年ずつ前期と後期に分けて進められ、内部の拝観や坐禅、写経や精進料理などは変わらず体験できます。また、一部ですが工事の様子を見学することもできるそうです。
「解体していく中で、建物の改造の痕跡や当時の人々の生き方をも知ることができ、これまでの歴史が浮き彫りになっていきます。すべてが整い、最終的に本来の大安禅寺の姿になることが一番の楽しみです」と高橋副住職。未来の姿に思いをはせ、貴重な様子を見学してみては。