全国のファンを虜にしている美しい仏像たち。
天平勝宝元(749)年、勝行上人が開いた『石照山 多田寺』。眼病を患った孝謙天皇の勅願で創建されたと伝わっていることから、眼病平癒を願う参拝者が多く訪れる古刹です。
多田寺には貴重な仏像が数多く収蔵されているため、全国の仏像ファンが集うお寺としても有名です。こじんまりとした本堂に、ご本尊である薬師三尊(重文)をはじめ、十一面観音、四天王、十二神将など、奈良・平安時代の仏像が11体も収められているというから驚きです。
それら一体一体を間近で拝観しながら、作られた年代や表情、立ち姿、愛称、こちらに収蔵された由来など、ご住職によるガイドをお聞きしていると、どの像にもそれぞれに秘められた物語があることが実感でき、不思議なご縁に思わず感じ入ってしまいます。
内陣でのお参りの際は、この規模のお寺には珍しい厨子や須弥壇の意匠などにもご注目ください。意匠の理由も、小浜の歴史をひも解く一助となることでしょう。なお、グリーンシーズンは基本的に毎日ガイドしていただけますが、ご住職が不在の日もあるので、参拝日が決定している場合は予約して足を運んだ方が何倍も深く楽しめること間違いなしです。
北陸随一の艶やかな花のお寺を目指して。
多田寺は、近年北陸有数の“花のお寺”としても人気を集めています。特に春のシャクナゲは圧巻です。約500本ものシャクナゲが、山の斜面を白やピンクに染め上げる様子は必見。境内にある一周約30分の八十八ヶ所霊場巡りの参道両脇にも植えられており、その可憐な姿を愛でながら周遊するのも、ここでしかできない過ごし方です。
また、牡丹には特にこだわりがあるというご住職。70種類約200本は北陸でも類を見ない規模であり、その見事な咲き姿はシャクナゲと併せて堪能したいところです。他にもツツジが500本、サルスベリが20本、しだれ桜が30本など、“花のお寺”にふさわしいボリュームで我々を楽しませてくれます。
この膨大な数の花々は、すべてご住職の手植えによるもの。「本数は現在(2023年)の数であって、これからまだまだ増やして北陸随一を目指します。今は4月下旬~GW頃が一番の見頃ですが、数年後には参拝シーズンならいつでも楽しめるようにモミジやハギなどの植樹も進めているところですので、楽しみにお待ちください」とにっこり。
続けて、「現代はストレスを抱えている方が多くいらっしゃいます。ぜひ綺麗なお花で心を鎮めつつ、夏には瑠璃色の光を浴びながら健康をご祈願いただき、心身共に健やかにお過ごしいただければ」との気遣いも見せてくださいました。
小浜でしか出逢えない青い光をくぐって。
ご本尊の薬師三尊がある本堂に向かう手前に、7月下旬~8月末までの期間限定で“瑠璃光門”と呼ばれる門がお目見えします。独特なブルーの色合いが美しい風鈴が飾られた門をくぐり、涼やかな音色に出迎えられながら本堂へ向かいましょう。
「地元のガラス作家さんが小浜ならではの素材から生み出したこの青色を、お薬師様が人々を救うために発すると言われている瑠璃光に見立てました。お薬師様が放つ優しい瑠璃色の光を感じながら本堂へお進みください」と、ご住職の玉川泰圓さん。
たくさん並んでいる風鈴は、すべて異なる形に仕上げられています。舌(ぜつ)に使われている牡蠣の形も異なっているため、同じ音の風鈴は一つとして存在しないそう。それぞれが奏でる美しい音色のハーモニーを堪能しながら、お薬師様の待つ内陣へとお進みください。
境内には小浜の歴史に触れられる遺構もたくさんあります。歴史的な要衝地であった痕跡も辿りながら、ごゆっくりお参りください。