いつの時代も、ここは人の集う場所。
緑に囲まれた空間で穏やかに過ごしながら、自分のリズムを取り戻してほしいと作られた「暮らしの複合施設 hibi」。海側に注目が集まりがちなおおい町に誕生した、山側の憩いスポットです。
代表の岸崎さんが目指したのは、“丁寧”で“美しい”時間を過ごす場所。ここでは忙しい毎日を少し休憩して、ランチやカフェ、こだわりのハンドメイド雑貨、よもぎ蒸し、ワークショップなどを楽しみ、心身をリフレッシュさせることができます。
岸崎さんも「心を潤す1日をここで過ごしてもらえたら最高だな、という思いでコンテンツを考えています。ここを目的地として来ていただいて、丸一日かけて楽しんでいただければ」と顔をほころばせます。
店舗は、おおい町史にも載っている石山城主・武藤家の築230年の住宅を移築・リノベーションしたもの。梁や柱などそこかしこに残る部材が、武藤家がこの地区にとってどんな存在であったかを雄弁に物語っています。
「おおい町史には、西郷隆盛の弟が50人ほどの政府高官を引き連れて猪撃ちや鹿撃ちに遊びに来たという記録も残っています。豪農だったこの家にはたくさんの人が集まって賑やかだったと思うので、新しく生まれ変わってもまたそういう場所にできれば」。グロッサリーのディスプレイボックスや棚など各所に散りばめられた往時の面影を探すのも、なんだか歴史を見届けているようで、心がときめくひと時です。
たまには、時の流れを忘れて舌鼓。
レストランスペースは、壁一面大きく取られた窓から見えるのどかな風景が印象的で、刻一刻と表情を変える空を見ているだけで心が穏やかになるのを感じます。
ランチは、地元おおい町の旬の食材を中心とした創作フレンチのコース。福井市のフランス料理店「L’aisance(レゾンス)」の吉川シェフが監修しており、食事からも丁寧さと美しさを感じ取ることができます。
「おおい町の食材が新鮮で美味しいのは“当たり前”。だからこそ、わざわざここに足を運んでいただいた方に“この食材ってこんな食べ方もあるの!”という発見を提供したい」との思いを込めた料理は、盛り付けから香り、味わい、食感に至るまで五感で楽しめるよう仕上げられています。へしこのソースや若狭地方産のお酢のジュレなど、所々に驚きが隠されており、ローカルガストロノミーを学んだ臼井シェフの今後の手腕にも期待が高まります。
カフェでは、コーヒーなどと一緒にお好きな自家製パイをどうぞ。ショーケースに並んだ、スイーツ系から惣菜系まで揃ったオリジナルパイはテイクアウトもOK。「気になったものをお店で、残りは夜ご飯の一品に」といった使い方もおすすめです。
また様々な設えにも、それぞれの物語が秘められています。機械のない時代に綺麗な角柱に仕上げられた柱、薄い板となりテーブルに生まれ変わった木材、支える役目を家からテーブルに移した礎石など見どころが満載です。なんと、カトラリーレストも“元 礎石”。そこかしこに潜む物語も併せてお楽しみください。
心が上がると、暮らしも上がる。
地域のちょっといいもの発信基地でもあるhibi。入口すぐのグロッサリーコーナーには、組子細工のアクセサリーや無添加のキャンドルなど“丁寧に手作りされたもの”や“暮らしをちょっと豊かにしてくれるもの”がずらりと並んでいます。
2階には女性専用のよもぎ蒸しサロンとレンタルスタジオがあり、よもぎ蒸しでは気になる症状に合わせてよもぎとハーブをブレンドしてくれるとのことなので、気軽に相談してみましょう。ヨガやキャンドル・コスメ製作などのワークショップが開かれるレンタルスタジオは、1時間1,000円とリーズナブルに借りることができ、研修や会議での利用も可能。いつもとは違う雰囲気で、良いアイディアも出やすくなるかもしれません。
今後はマルシェや朝活などのイベントをはじめ、地域と一緒に多様な活動をしたいと考えている岸崎さん。「ここは考え方ひとつで、まだまだ面白い使い方ができると思うんです。県内外を問わず、色んな人が色んな形で交流して、それが相乗効果を生んでおおい町がもっと面白くなれば」。
昔と今が心地よく“循環”する空間で、自分のリズムを整える1日をぜひご堪能ください。