時の流れがゆったりなエリアでじっくりと味わう、戸隠流十割そば。
ゆるやかな時間が流れる越前陶芸村の一角にある『十割蕎麦 だいこん舎』。タイムスリップしたかのような趣のある古民家で、店主こだわりの風味ゆたかなお蕎麦をいただけます。
こちらでいただくお蕎麦は長野の戸隠(とがくし)流。「丸延し一本棒」といって、麺棒一本のみで生地を丸く伸ばすのが特徴です。
店主の南和孝さんが戸隠流のお蕎麦との出会ったのは、京都の「戸隠流そば打ち処 實德(みのり)」。初めてその蕎麦打ちを見た時、「その美しさに感動して。戸隠流でなかったら自分は蕎麦の世界に入ってなかったかもしれない」というほど感銘をうけ、同店で修行を始めるきっかけになったのだそう。
つなぎ三割が主流の戸隠流と違い、現在『だいこん舎』では無農薬栽培で育てられた福井産の玄蕎麦を石臼で自家製粉し、つなぎなしの十割蕎麦に仕上げています。
店名につけた“だいこん”の由来は「ぴりりと辛くていろんな用途がある。引き立て役でもあり、いろんなうまみを吸っておいしくもなれる。自分の性格にも似てるなあ、と」と南さん。大きな根っこを張って人が集まってくるようにとつけられたそうです。
手間と愛情をかけた南さんの丁寧な手仕事がそのまま表現されたお蕎麦の味に足繁く通うファンも多く、今年発表された「ミシュランガイド北陸2021特別版」では「ミシュランプレート」に選出されました。
種類豊富な「おろし蕎麦」と出汁の旨みが格別な「もりそば」。
おろし蕎麦は福井人定番の「ぶっかけ」の他、大根おろしの搾り汁と醤油で食べる辛さ際立つ「おしぼりおろし」、みぞれのように粗くおろした「鬼おろし」に福井産もみわかめが香ばしい「磯おろし」、麺があたたかい「ぬくおろし」とバラエティ豊か。
出汁の旨みに定評がある戸隠流ならではの「もりそば」も人気メニューです。その他オーガニックのくるみをすり潰してだしと合わせた「くるみそば」や、秋から冬の時期にはかけそばにもみ海苔と本わさびがのった「花巻蕎麦」なども。
お出汁には化学調味料などを一切使用せず天然素材のみを使用。「ぶっかけ」には天然の昆布を、「もりそば」にはそれに加え干し椎茸と出汁をとる直前に手で削る鰹節を使用しています。
すべてのメニューが越前焼の器に盛られて出てくるのも嬉しいサービス。「お好みでこの作家さんでと言ってもらえれば喜んで対応します」とのこと。店内では地元作家さんの作品の販売もあり、越前焼の器を愛でながらお蕎麦を味わえるのは、陶芸村ならでは。
別腹を準備してのぞみたい。外せない甘味メニュー。
『だいこん舎』さんへ行く際には、お蕎麦の後の甘味のために別腹のご用意を。
時間をかけて炊いた北海道産小豆のこっくりとしたやさしい甘みとふわふわもっちりなそばがきの相性がたまらない「そばがきぜんざい」。黒糖の風味が味わい深い「黒蜜蕎麦団子」。どちらも蕎麦の風味を引き立てるやさしい甘みともちもちの食感がくせになる味です。緑茶・抹茶・ホットコーヒー付のセットから選べます。
また、常連さんが毎年楽しみにしているという季節限定メニューも。山菜が美味しい春の天ぷらはもちろん、夏には「まこも金時」や「ゆず蜜」「梅シロップ」など優しい甘みが楽しめるかき氷メニューに越のルビーやオリーブオイルを使った「カルパッチョ蕎麦」。秋からお目見えの「まこもづくし」のコース料理も。
旬野菜の天ぷらや甘味もついたお蕎麦のコース料理は、4名から5日前までの要予約にて。蕎麦粉で作ったピザやオリーブ豆腐などこちらでしか味わえないメニューにも出会えるかも。
陶芸村という立地にありながら平日でも賑わうこちらのお店、予約してから向かうのがおすすめです。