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おとな女性のご褒美たび

公式 美めぐりふくい

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点と線で描き 金を沈めて輝かせる 沈金師『冨田 忠志』

「塗り」の上に刀で彫って描きだす繊細な絵。

沈金とは、上塗りされた漆器の漆面の上に刃物で文様を「線」や「点」で彫り、彫ったあとにできた凹部に漆をすりこみ、そこに金粉や色粉などを沈めていく作業。細かな「線」や「点」で描く画はとても繊細で、そこに金粉を沈めると絵が光り輝き美しく浮かびあがります。

鯖江市河和田にある「沈金とみた立山公房」の二代目冨田立山(忠志)さんが、父親の初代冨田立山(信行)さんの後を継ぐと決心したのは高校生のころ。当時は父親のもとに取材がきたりテレビに出たりしているのをみながら、漠然と自分もあんな風に有名になりたいと思っていたそうです。

高校時代に美術の先生の勧めで大阪の美術学校の集中講習に参加したことが、冨田さんの沈金師人生の1度目の転機でした。毎日とにかくデッサンを描き続けたことで、絵を描く基本が身につき自信にもなったそう。高校卒業まで3回参加し、今でも絵型をつくる時にその経験が役立っているのだとか。

点彫りも線彫りもできるハイブリッド沈金師。

その後父親の計らいで、石川県輪島の三谷吾一氏のもとで沈金師として本格的に修行を始めます。輪島塗は「点」を重ねる「点彫り」の技法を使い、越前漆器は「線」を描く「線彫り」の技法が特徴。輪島から河和田に帰ってきたころは、刃物の持ち方まで違う越前漆器の線彫りに慣れずに苦労したのだとか。

今では点彫りも線彫りもできるハイブリッドと呼ばれることもあるそう。点を重ねてやわらかい印象にする絵と線で引いて力強さを出す絵など、描くモチーフによって使い分けているそうです。「両方できるのがいいと思えるようになるまでには5年ほどかかった。」と冨田さん。

いつか父が立っていたポジションまで。

冨田さんの2度めの転機は、父親である先代が病に倒れ突然工房の仕事を全て任されることになった時。その時初めて自分がやっていたのは全体の2、3割だったと気づき愕然としたそう。「病院に道具を持って行って父親に聞いたり、問屋さんに父親のつくった作品を探してもらいそれを見ながら彫ったり、とにかく必死でした。」2年間の闘病の末にお父様が他界。「悲しかったけど、それよりとにかく仕事をしないと。そこで覚悟がついた。」今でもあの時こう言っていたな、と思い出すことがたくさんあるそう。

今も日々の仕事はひたすら必死、でも展示会に出して入選した時には喜びを感じるという冨田さん。「いつか父が立っていたポジションまで。父が得意としていたモチーフの中で”富士山”なら立山さん、と言われるようになれれば。可能な限り挑戦し続けたい。」

infomation

沈金とみた立山公房
〒916-1222 福井県鯖江市河和田町14-5
TEL 0778-65-1293 / FAX 0778-42-5616

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文:小寺 奈波 写真:出地 瑠以(cocoon)

最終更新日 : 2021年3月27日