素材の良さに自信あり、親子2代にわたる江戸前寿司。
福井市中心部の松本通りに店を構える『幸寿し』。昭和43年に開店し、親子2代にわたり江戸前寿司を提供しています。暖簾をくぐって引き戸を開けると、そこは一枚板のカウンター越しに和やかな会話が弾む、昔ながらの風情ある空間。2階は落ち着いた雰囲気の和室にテーブルと椅子が置かれ、カジュアルなスタイルでお寿司をいただけます。
「江戸前の寿司は、魚の美味しさを引き立てるもの。素材の良さには自信があります」と胸を張る2代目の長井慎二さん。福井ではあまり見られない江戸前寿司は、新鮮な魚をただ切って使うのではなく、ひと手間かけるところが特徴です。塩や酢で〆たり、熱を加えて煮たり、醤油や煮汁に漬けたりすることで、素材の旨みを引き出しています。
「福井は魚が美味しいのでなるべく手を加えないようにしていますが、例えば、季節によって脂がないものとかは、スダチを搾って酸味をきかせるなどすることで味が美味しくなりますね」
季節の旬のネタと美味しいお酒で、至福のひとときを。
カウンターの透明なネタケースには、季節の旬のネタがズラリと並びます。「福井は四季ごとに美味しいものがあるので、なるべく日本海でとれたての地のものを使いたい」という長井さん。仕入れは仲卸以外に、自ら市場の二番競りにも足を運んでいます。「見た目は同じでも、脂ののりとかまったく違う。日々新しい魚と出合うので、毎日が修行です」
店のおすすめは、季節によって異なる8種類のネタが味わえる『おまかせお寿司』。イカ、甘エビ、イクラの醤油漬、ウニ、トロ、赤身、コハダ、アナゴなど、新鮮な旬のネタはどれも赤酢を使ったシャリと相性抜群。素材の良さを生かした、江戸前寿司ならではの細やかな職人の仕事が施されているので、醤油などつけずそのままで至福の味わいを堪能できます。
お寿司にあうお酒のラインナップも充実。福井の地酒をはじめ、ワイン、焼酎も人気だそう。「今はお酒の種類が多く、お客さまに教えてもらうことも多いですね」とほほ笑みます。
アットホームな雰囲気で、江戸前を美味しくいただく。
東京と福井で修行を重ね、会席料理も学んだ長井さん。店では一品料理や会席料理も提供していて、だしの香りとトロトロの食感がやみつきになる『れんこん饅頭』は定番人気だといいます。
寿司屋というと敷居が高く緊張するイメージがあるかもしれませんが、家族で営む『幸寿し』はアットホームで温かい雰囲気。「お箸は使わず、手でつまんでどうぞ」、「ショウガは味をキレイにするためのもの。お寿司の合間に食べると、前の味を消してくれますよ」など、長井さん親子や奥さまのやさしい声かけが緊張をほぐし、リラックスして美味しくお寿司を楽しめます。
「初めての方は、〝美味しいものをお願いします〟と素直に声をかけてください。おまかせを召し上がっていただいた後に、好きなネタを楽しんでもらえたら」と初めての寿司屋の極意も教えてくれました。「美味しさの決まりごともありますが、楽しい時間を過ごしてもらえたら、それが一番ですね」と穏やかな笑顔が広がります。