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美めぐりふくい

伊藤酒造合資会社

福井の自然を醸す純米吟醸、お殿さまが愛した『越の鷹』

area:福井市
  • グルメ
information

伊藤酒造合資会社
福井県福井市江上町44-65(地図
TEL/0776-59-1018
HP/http://koshinotaka.jp/

credit
写真:出地 瑠以(cocoon)

最終更新日 : 2024年9月9日

蔵元自ら杜氏を務め、純米吟醸の酒造りを極める。

福井藩の菩提寺である大安禅寺の近くに酒蔵を構える伊藤酒造。幕末頃から酒造りをはじめ、明治27 (1894) 年に伊藤酒造合資会社を設立。今は蔵元の伊藤さんが自ら杜氏を務め、代々伝わる『越の鷹』の名を冠した純米吟醸などを造っています。

「江戸時代、この辺りによく鷹狩りに来ていた福井藩のお殿さまが、うちに立ち寄り日本酒を誉めたといわれてます」と、銘柄の由来を語る伊藤さん。東京農業大学農学部醸造学科を卒業後、別の仕事に就きましたが、杜氏が他界したことをきっかけに実家の酒蔵を継ぐことに。大学で学んだ醸造学を頼りに酒造りを始めるも、「実際は、教科書通りにいかないことばかり。頑張っていたけど、今の自分から見ると『なにしてんねん!』てレベルです」と苦笑いします。

転機になったのは、ある福井の蔵元にかけられた言葉でした。「そのバイタリティがあれば、いい日本酒ができる」と激励され一念発起。別の蔵元の杜氏や食品加工研究所の先生と出会い、実践の中で学びを深めます。ひたむきに「一番好き」な純米吟醸を造り続ける中、福井県の新酒研究会で入賞。広く認められるようになりました。

福井の酒米と酵母で醸す、和食によく合う上品な辛口。

伊藤さんが目指すのは、福井の自然から生まれる酒米と酵母を使った酒造り。不要なものは入れず、米の香りと旨味を存分に引き出した純米吟醸などを醸しています。

酒造りに使う酒米は、「県産の『五百万石』と、福井で生まれた『越の雫』は外せない」と熱く語る伊藤さん。近年は、福井で開発された新品種『さかほまれ』も加わったといいます。日本酒の香りや味わいを決める酵母も、福井生まれにこだわりが。県が独自に開発した『FK-501(福井酵母)』や『うららの酵母』を使い、辛口でありながらまろやかな旨味に仕上げています。

「日本酒造りで、酒米はボディ、酵母は顔となるもの。例えば、五百万石を使った『越の鷹』の辛口純米吟醸は、上品な大和撫子。スタイリッシュで、シャイな感じです」と伊藤さん。「すっきり辛口系で、ちょっといい香りがして慎み深い。最高の食中酒と思っていただければ」。その言葉通り、燗でも冷でも、どんな和食にもすっと寄り添い、美味しさを引き立てます。

地酒がつなぐ人の輪、大安禅寺に門前町の賑わいを。

今では県内外で多くのファンを獲得している『越の鷹』。伊藤さんの気さくな人柄も相まって、インスタなどSNSを通じて交流が深まり、お客さまを酒蔵に招いて一番搾りの地酒やおそばをふるまう『新酒の会』を開くまでになりました。

「お客さまの飲んだ感想をストレートに聞けるのがいいですね。僕は杜氏としてまだまだ成長できると思っているので、ぜひ毎年飲んでいただき、味わいを確認してもらえたら」と真摯に語ります。

さらに、伊藤さんは「北陸新幹線延伸開業に向けて、七瀬川が流れる大安禅寺地区にお客さまを呼びたい」と、近隣の仲間と『ナナセカイ』を結成。酒蔵見学やカフェイベント、写経や粘土板アートのワークショップなどを行っています。「大安禅寺の大改修が10年後に完成するとき、門前町を復活させたいとみんなで言っているんです」。風土に根づき、人をつなぎ、笑顔が生まれる。遠い昔から受け継がれてきた、美味しい日本酒が生み出す風景がここにあります。

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伊藤酒造合資会社
福井県福井市江上町44-65(地図
TEL/0776-59-1018
HP/http://koshinotaka.jp/

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写真:出地 瑠以(cocoon)