目指すはただひとつ。お客様の“美味しい!”だけ。
2022年1月、「イベント会場でしか買えない大人気の洋菓子屋さんが実店舗をオープンする」と話題になりました。『焼菓子 タケノウチ』は、白い外壁に紫色のポイントが目印の小さなお店です。オーナーの竹内悦子さんは、フレンチレストランやケーキ店での修行やイベント出店などの経験を重ねるうちに膨らんだ「自分のお店を持ちたい」という思いが、やっと形になったと振り返ります。
頭の中は常に焼き菓子のことでいっぱいという竹内さん。「製造から販売まですべて私一人なので、お店がクローズしてる4日間に焼き菓子を作って、オープンしている3日間に販売しながら、果実の加工やケーキ・タルトを焼き上げるという感じですね」と息つく暇もありません。
そんな竹内さんの原動力は、お客様の「美味しい!」という一言に尽きます。「試作を重ねて“これだ!”と思うものが出来るじゃないですか。自分としてはちょっと凝ったことをしていても、全く気付いてもらわなくていいんです。ただただ“美味しい!”と共感してもらえることが、何よりも嬉しい」と言い切ります。
そんな竹内さんの情熱が詰まった焼き菓子は多くのファンを魅了し、週3日のオープン日にはたくさんの笑顔が集まります。
作る人も食べる人も、皆で幸せになりたい。
どれも甲乙つけがたいこだわりを感じる焼き菓子は、常時約20種類。その中の一つが、竹内さんの“原点”です。「ヴィエノワというクッキーが、自分でレシピを作った最初の焼き菓子。本当にシンプルで素朴なんですが、意外とリピーターが多いんですよ」。シンプルなものほど配合が鍵となりますが、ほのかに香る小麦とバターの優しさ、後に残る甘さが絶妙で、癖になるのも納得の味わい。自然と、他の焼き菓子への期待も高まります。
パウンドケーキやフィナンシェ、クッキー、タルト、シフォンケーキなど選びきれないほどの焼き菓子を前に、素材について尋ねると「こだわりはよく聞かれますが、挙げるなら卵ですね。福地鶏の卵の中でも、特に味が濃くて香りが良いものを使っています。あとは私が美味しいと思うものなんですが、自然と地元のものが多くなりますね」と竹内さん。「あわらや坂井には美味しいものがたくさんあって、手にすると“どんなお菓子にしようかな”と楽しくなるんです」と続けます。
素材の味や香りがしっかりと感じられる焼き菓子は、一口ずつ丁寧に食べ進めたくなるものばかり。食べ終わりの充足感までも心地よく楽しめます。
待ち遠しいのは、職人の気まぐれ。
今後は、「作ったことのないお菓子を作りたい」と話す竹内さん。「焼き菓子は伝統菓子が多いけど、その中でも作ったことがないものを作ってみたくて。使ったことのない食材もまだまだ多いので、未体験の製法や素材の組み合わせにチャレンジしていきたいですね」と目を輝かせます。
「すごく気まぐれなので、メニューは思いついた時が作り時。私が食べたいと思うものを作って、美味しいと思うものをお届けしていきます」。
焼き菓子を愛する職人の丁寧な手仕事にハズレはありません。“次の気まぐれ”を定期的に確認したくなる焼き菓子専門店は、大切な方への手土産にも最適な逸品揃いです。