春夏秋冬の木々の色に染まる水鏡。
打波川の上流の願教寺山(標高1,690m)のふもとには、ブナやミズナラなどの原生林に囲まれた幅ヶ平があり、その中に周囲400mの『刈込池』があります。その昔、泰澄大師が、白山に棲んでいた大蛇を、刈込池に閉じ込め(刈り込め)たという伝説から、名づけられたといわれています。白山連峰の1つである、「三ノ峰」を映す静謐な池で、県内随一の紅葉の名所としても知られています。
水面に映りこむ、モミジやカエデ、ブナなどの原生林の紅葉が映える光景は、まるで絵画のよう。紅葉の時期にピックアップされがちですが、あふれんばかりの緑が萌える、春や夏の刈込池も素晴らしく、湖面は風がない時には、周囲の鮮やかな木々や青く広がる空を映し込みます。こうした、季節ごとに異なった表情で、訪れた人の目を楽しませてくれます。
ため息が出るほどの、美しい風景。
越前大野の勝原(かどはら)地区から林道を約20km進み、終点にあたる『上小池駐車場』から片道約1時間のトレッキング。往復約2時間の山歩きなので、動きやすい服装・履きなれた靴で出かけるようにしましょう。駐車場から5分ぐらい歩くと分岐が現れ、刈込池まで1.3kmの「石段コース」と、刈込池まで2.4kmの「岩場コース」の2つに分かれます。石段コースは、急な階段等があるため、距離は長いけれど緩やかな道が続く岩場コースがおススメかもしれません。
森の中、野鳥のさえずりを聴き、草木の香りを運ぶ風を感じながら自分のペースでゆっくりと神秘の池を目指します。木々の間を抜けていくと、突然目の前に広がる幻想的な世界……。静かな水面に、くっきりともう1つの世界を浮かび上がらせる鏡のような風景は、息をのむ美しさです。
日常から離れ、深呼吸したくなる旅へ。
忙しい日々、なんでも便利に揃う今の時代。街の喧騒から、日常から少し離れ、携帯の電波もつながらないような秘境を目指して、ちいさな冒険の旅へ。大自然が生み出す絶景とじっくりと向き合い、「今」しか見ることのできない一瞬の風景を目に焼き付ける……そんな心洗われるような風景に、会いに出かけてみてはいかでしょうか。
また、『刈込池』の帰りには、車で20分程度、上小池勝原線の中間あたりにある奥越の秘湯『鳩ヶ湯温泉』(日帰り入浴 11:00-16:00)に寄り道して、お風呂に浸かりながら、山歩きの疲れを癒してくださいね。