小浜藩藩主を招いた迎賓館が、「みんなの別邸」に。
「小浜のかけはしとなる、みんなの別邸」をコンセプトに掲げる、『GOSHOEN』。ここは北前船の豪商として小浜の発展を支えた古河屋が、江戸時代後期に小浜藩のお殿さまなど特別なゲストを招くために迎賓館として建てた旧古河屋別邸『護松園』を改修したコミュニティスペースです。
数寄屋風書院造りの趣ある空間に、若狭塗箸の製造・販売を行うマツ勘の『箸蔵まつかん』本店、美味しいコーヒーを堪能できる『ene COFFEE STAND』、テイクアウトしたコーヒーを片手にくつろげるシェアスペース『みんなのリビング』、コワーキングスペースになる『みんなの図書館』が配され、2021年5月に開業しました。
2023年1月には、古河屋と若狭塗箸の歴史を伝える『みんなのミュージアム』とギャラリースペースを設けた土蔵の改修と庭園の整備が完成。全面オープンとなりました。
歴史ある文化財で、くつろぎ、学び、交流する。
福井県指定有形文化財および日本遺産「北前船寄港地・船主集落」の構成文化財に指定される、貴重な文化財でもある『GOSHOEN』。運営に携るマツ勘の代表取締役 松本さんは、「ただ見て回るだけの場所ではなく、かつてのおもてなしの場をまちのコミュニティスペースとして展開し、人との出会いを生み出しながら小浜と箸産業の魅力を伝えていけたら」と想いを語ります。
その言葉通り、『ene COFFEE STAND』は正面玄関以外に直接入れる勝手口を設け、若者から高齢者まで誰もが気兼ねなく立ち寄れる雰囲気に。秋田杉を使った上質な和室や縁側は、モダンな北欧チェアでくつろぎ、蓬莱式の庭を眺めてコーヒーを味わえる『みんなのリビング』になっています。月を見るためだけに造られたという2階の特別な『月見の間』も、カフェスペースとして開放。遠い昔に、お殿さまが見た風景を満喫できます。
また、300冊以上の蔵書が並ぶ『みんなの図書館』は、仕事や勉強に集中できるコワーキングスペースにぴったり。貸し切りで、ワークショップや会議などに使うこともできます。
毎日の食卓を楽しく彩る、箸づくりのストーリー。
小浜は、日本の塗箸シェア8割を誇る一大生産地。『GOSHOEN』内にあるマツ勘の『箸蔵まつかん』本店には、伝統的な若狭塗箸をはじめ、地元の箸職人や工房と共同で手掛けた箸が一堂に並びます。
小浜の北陸らしい空と海の色をテーマにした箸や、ぬくもりある天然木、波佐見焼や加賀九谷焼とのコラボレーションから生まれた箸など、デザインもアイデアも多種多彩。製造工程や手掛ける職人さんの話といった、背景にあるストーリーを知ることもでき、毎日の食卓を楽しく彩るとっておきの1膳がきっと見つかります。
1922年に創業し、100年以上の歴史を受け継ぐマツ勘。実は、塗箸産地で初めて商業デザインを取り入れたのは同社だといいます。「36年前に父が初めてチャレンジしたもの。次の100年へ、業種を超えた横のつながりが大事になる中で、箸産業から視野を広げ、同じ想いを持つ人と交流の機会を創出したい」と松本さんは未来を展望します。