お出汁が引き出す、素材の実力。
「料亭 中松」は、多くの人々の節目や大切なシーンに寄り添ってきた鯖江の老舗料亭。板場を取り仕切るのは4代目の佐々木博則さんです。「福井県は海・山・里に囲まれた、魅力的な食材が豊富な土地。中でも魚介類は県内外を問わず人気が高いので、旬のものを取り入れながら伝統的な日本料理として味わっていただくことを心がけています」。
4代目が最も大切にしているのは、何と言ってもお出汁。昆布とカツオの旨味が詰まったお出汁は、そのものが美味しいのは言うまでもありませんが、素材の旨味を引き出してくれる立役者でもあります。お出汁と素材の相乗効果で醸し出された奥深い味わいは、まさに“中松の味”。それが存分に堪能できる煮物・椀物を含むお任せ会席には、文字通り至福が詰まっているといえるでしょう。
このお出汁は、各種鍋コースにも使われています。通年ではすっぽん鍋やしゃぶしゃぶなどで、冬季限定ではカニ鍋で味わうことができますので、季節を変えてぜひご賞味ください。
「料亭はやっぱり敷居が高くて……」という方には、まずはランチがおすすめです。「特選ミニ会席」とそのダイジェスト版「松花堂弁当」があり、どちらも目にも美しく「食べ進めるのがもったいない」と思ってしまうほどです。
女将は日本酒ソムリエの資格も有しているので、相性抜群の地酒とのペアリングをお願いできるのも心強い限り。地物が奏でる魅惑のハーモニーを、ごゆるりとお楽しみください。
変わる時代と、変わらない心。
中松の始まりは大正末期。創業者である初代は、歩兵第36連隊で調理兵をされていたのだとか。無事鯖江に戻り、柳町にて仕出し弁当屋を始めたことが原型となりました。その後、2代目によって現在地に移転。以来、松阜(まつおか)神社と共に鯖江の人々に寄り添い続けています。
時代は大きく変わっているものの、近年、結納や顔合わせといったイベントを行う人がまた増え始めていると感じている佐々木さん。「人生で数えるほどしか行わないイベントは、分からないことだらけですよね。長年携わってきた私達だからこそできるお手伝いやアドバイスもありますので、お気軽にご相談ください」と笑顔を覗かせます。
続けて「料理を味わっていただくことは大前提ですが、やはりここは料亭。“大切な方をもてなす場”であることを大事にしたいと思っています」とも。その気遣いと老舗の風情こそが、中松を心尽くしの特別な場たらしめているのです。
鯖江と共にあり続ける料亭。
2024年3月、北陸新幹線が敦賀まで開通した福井県。「鯖江には新幹線の駅はありませんが、ものづくりのまちとしてたくさんの方がお見えになっています。そうなると、やはり食の充実も大切な課題のひとつ。今後とも、ものづくりのまちに華を添えられるような料理屋でありたいですね」と前を見据えます。
老舗の誇りと受け継がれる味を守りながら、中松の次世代への挑戦は続いていきます。