目指すは、福井の良いものと笑顔が集まる日本酒ドメーヌ。
2022年6月に誕生した『ESHIKOTO(えしこと)』は、黒龍酒造を擁する石田屋二左衛門が手掛ける “大人のため”のスポット。20歳以上だけが入場可能な、お酒と食を起点とした福井を楽しむための複合施設です。
始まりは、8代目水野直人社長がワインの名醸地で見た光景でした。ブドウ畑しかないような田舎のワイナリーに世界中からたくさんの人々が訪れ、雄大な自然に抱かれながらワインとその土地の食を笑顔で楽しんでいたのです。「日本の酒蔵だと歴史ある建物を見せて終わりということが多くて、お酒にまつわるストーリーが見えづらいんですよね。そこで“福井の豊かな自然を感じながら、お酒を楽しんでいただく場所を作りたい”との思いが膨らみ始め、10年の歳月をかけて構想を形にしました」と、石田屋の水野真悠さんは振り返ります。しかしその10年は、敷地の選定から建材、ディスプレイ、商品に至るまで、徹底的に“福井”にこだわり抜くには必要な時間でもありました。
「ESHIKOTO」は「善(え)しこと」。福井の良いこと・ものを発信するだけでなく、福井にとって良いことをしていこうという思いが込められたこの場所は、逆さ読みすると「永(とこしえ)」となり、永遠・永久を示唆すると同時に永平寺を連想させるという含みも持たせています。
福井の人が福井の素晴らしさを再発見し、県外の人に福井を自慢できるスポットになるように。日本の・福井の原風景ともいえる豊かな自然が守られてきた永平寺だからこそ誕生した、大人しか体験できないアミューズが詰まった場所です。
伝統を守り、磨き上げ、未来に繋ぐ。
昔、黒龍川と呼ばれていた九頭竜川。黒龍酒造にとっては名前の由来であり、その地下水で今に続くまで酒造りを行っている恵みの川です。「九頭竜川を一望できるここで、私たちのお酒を発信していくことはもちろんですが、それ以上に福井の食や伝統工芸を発信していきたいと考えています」と真悠さん。日本酒をはじめ、越前漆器や越前焼、越前打刃物、越前箪笥など伝統工芸が今なお生活に密着している福井。それらの技術や文化が後世に継承されていくためには、消費者の目に触れやすいアクセスポイントが不可欠であり、ここはその役割を担うことも目指しているのです。
約3万坪に及ぶESHIKOTOの敷地。私たちが気軽に訪れることが出来るのは、その広大な敷地の一角にある「酒樂棟」です。レストラン「Apéro & Pâtisserie acoya」と酒ショップ「石田屋」が入る酒樂棟で、五感をフル稼働させながら福井を多面的に堪能する時間はまさに至福そのもの。今後はさらに飲食店を増やすほか、オーベルジュなどの計画も進められる予定です。
伝統的な福井から、福井を表現した食まで。足を運んだ人だけが知る“福井の真の魅力”が、ここには詰まっています。
世界に羽ばたく新しい日本酒の発信源に。
黒龍酒造の新たな旗艦店としてオープンした「石田屋ESHIKOTO店」。ここでは常時15種類程の銘柄を揃えていますが、なんと半分はここに来なければ買えない銘柄というから驚きです。
中でも力を入れているのは、世界も注目しているスパークリング日本酒「awa酒」。「スパークリング日本酒は甘口のものが多いですが、当蔵のものはしっかりドライな飲み口に仕上がっています。これは15ヶ月以上瓶内二次発酵させ、糖分をしっかり分解させているから。新しい日本酒として、ぜひお試しいただきたいです」と真悠さんも自信を覗かせます。
このawa酒、グラスに注いで美しい泡を愛でることから楽しみが始まります。キメが細かく持続性の高い泡は、つい見惚れてしまうほど。米の旨味をしっかりと感じるキリリとした飲み口は、和食にはもちろん洋食にも驚くほど合わせやすい仕上がりになっています。多様なシーンでの活躍が期待でき、固定観念にとらわれない食とのマリアージュを楽しみたくなること間違いなしです。
「でもスパークリング日本酒には馴染みがなくて……」という方は、まずは店内のバーカウンターでの試飲(有料)からお試しを。お勧め3種類の飲み比べで、今後の人気の高まりを予感させるawa酒も確かめることができますので、ぜひどうぞ。
店内では酒器や片口など、お酒にまつわるアイテムの取り扱いも。ディスプレイには黒龍酒造のロゴが刻まれた越前箪笥が使われるなど、伝統と技術の調和が心地よい空間になっています。店内や敷地内には、他にも多くの“made in 福井”が散りばめられていますので、ぜひ自然の恵みと技術の折り重なりをお楽しみください。
味わうことだけが日本酒を楽しむことではない、と背景まで感じさせてくれる『ESHIKOTO』。まさに“ストーリー”を感じるスポットです。