家具屋が並ぶ、歴史あるレトロな『タンス町通り』。
越前市の旧北陸道沿いにある『タンス町通り』。その名の通り、家具の製造販売や建具などを手がける店が集う全国的にも珍しいエリアです。『三崎タンス店』は、江戸時代末期にこの地で指物師として活躍した初代 三崎半三郎が創業。江戸末期に建てられたといわれる築150年を超える店舗は、『府中まちなか博物館』および『ふくいの伝統的民家』に指定されています。
「江戸後期から木工技術を持った職人が住み始め、昭和初期頃にタンス造りの職人が中心となってできた歴史ある通り。明治8年の古い地図には『三崎屋』の名が記されています」と語る、8代目 三崎俊幸さん。
かつて15〜16軒あった家具屋は、製造の機械化による騒音の理由もあり、多くが郊外の工業団地に移転。今では『三崎タンス店』を含め5〜6軒しかありません。それでも、古い建物が残る通りには、今もタンスに関する金具屋などの看板が見られ、昔の面影を感じることができます。
江戸から令和、いくつもの時代を超えて受け継ぐ手技。
「江戸末期から明治時代、うちでは寺社仏閣などの指物の他に、商家の金庫代わりとして使われた越前箪笥を造っていました」と三崎さん。桐やケヤキを使い鉄製金具や漆塗で装飾した越前箪笥は堅牢で、火事のとき外へ出せるよう車輪がついているのだそう。「越前箪笥は300年もつといわれています。うちには先祖が造った150年の越前箪笥があり、まだ折り返し地点ですね」とニッコリ。
大正から昭和の頃は、嫁入り道具の総桐たんすが主流に。職人歴20年の三崎さんは、「桐たんす造りは、ノミやカンナを使って、1個1個の引き出しがぴったりしまるよう丁寧に手であわせていきます。時が経っても洗い直せば美しく甦り、修理しながら長く使えます」と胸を張ります。
平成〜令和に移ると、無垢の木を使った一枚板のテーブルや棚など、越前指物の意匠や技を受け継ぎながら、現代のライフスタイルにあったデザイン家具も手がけるようになったといいます。
ものづくりとまちづくり、人との出会いを未来へつなぐ。
三崎さんは近年、業種を超えたコラボレーションにも挑戦しています。地元の仏壇店&石材店と企画したオリジナル家具『縁ディング箪笥Yui』は、一見趣ある小型の越前箪笥の中に、思い出の品や遺骨、仏具などを納めることができ、日常の中で気軽に手を合わせられます。
地元商店街の有志と実行委員会をつくり、約10年にわたり『昭和の花嫁行列』を企画・開催。コロナ禍で2年間中止していましたが、今年は10月に開催を予定し、『タンス町通り』を華やかな婚礼衣装をまとった新郎新婦と、箪笥などの道具を担いだ行列が練り歩きます。
2年後の北陸新幹線延伸開業を見据える三崎さん。「ものづくりのアイデアはお客さまと話す中ででることが多く、ネットだとなかなか生の声が聞けません。この辺は半径15キロ以内に越前漆器、越前和紙、越前打刃物、越前焼、越前箪笥の5つの伝統工芸があり、ぜひ都会からこちらに来てもらい、伝統工芸の産業を巡ってもらえたら」と意気込みます。