まるで絵画のような四季の移ろい。
令和2(2020)年に創建550周年を迎えた、越前市武生地区にある『陽願寺』。浄土真宗本願寺派(西本願寺)の流れを汲む蓮如上人ゆかりのお寺で、府中御堂とも呼ばれています。
陽願寺を訪れる参拝者のお目当ては、何といっても「御殿の間」から望む庭園。春から秋にかけて、刻一刻と移ろいゆく色合いは見ているだけで心が浄化されるようです。
芽吹きの力強さを秘めた新緑の春、深い緑にみなぎる生命力を感じる夏、そして鮮やかなコントラストが美しい紅葉の秋。武生地区のまちなかにありながらも心地よい静けさに満たされたこの一室で、それぞれの季節にしか見ることができない風雅な眺めを心ゆくまでご堪能ください。
粋を尽くした上質な建築。
陽願寺は室町時代の創建ですが、幕末の大火で伽藍が焼失しているため、現在残る建造物は幕末~近代にかけて再建されたものが中心となっています。そのため、お寺には珍しい近代建築の要素がそこかしこに見て取れることも特長です。
国登録有形文化財に指定されている9棟の中でも、特に興味深いのは「対面所」と「御殿の間」。伝統的な和風建築であるものの、意匠には近代的な要素を垣間見ることができます。それらの集大成となっているのが「洋館」。90年以上前に作られ、当時の最先端の技術とデザインを詰め込んだこの一室は、お寺だということを忘れてしまうモダンな空間となっています。
また、職人技の結集と言えるのが本堂。極楽浄土を表現しているという金箔の眩しさもさることながら、本堂を支える太い柱と一枚板の梁はまさに圧巻。古の宮大工たちの確かな仕事には、驚かされるばかりです。
事前予約にて、スタッフの方によるガイドを聞きながら拝観することができます。注目ポイントがわかるだけでなく、時折交じるトリビアに知識欲も満たされること間違いなし。ガイドは週末のみ、5名以上で3週間前までに要予約、オリジナルの和菓子付きです。こちらの和菓子にも、「そうなんだ!」が隠されています。ぜひ現地で確かめてみては。
550年の歴史を知る。五感で楽しむ。
その昔は国府が置かれ、交通や戦における要所となっていた武生地区。それを示すのが近隣に多く残るお寺なのですが、そこに庭園があるのは実は珍しいと当代住職の藤枝聖さんは言います。「お庭が作られた意味やどこを意識して見ると良いかなどを知ると、より楽しんでいただけると思います。庭園や建築の美に触れながら、ご自分の内面と向き合うひと時をお過ごしください」。
心を研ぎ澄ました帰りには、陽願寺オリジナルのクロモジ茶をお土産に。甘さの中に爽やかさを感じる香りはリラックス効果抜群。魔除けとしても使われる薬木が、心身を優しく整えてくれるようです。他にも仏教に由来を持つオリジナル菓子もありますので、参拝の記念にぜひどうぞ。