ものづくりに魅せられて、家具製作の道へ。
福井県越前市大虫地区、のどかな田舎の風景が広がるエリアに工房を構える『ファニチャーホリック』。指物師のもとで修業した経歴を持つ山口祐弘さんは、国指定の伝統的工芸品「越前箪笥」から、無垢材のオーダーメイド家具や小物、建具まで、木に関することならなんでもおまかせの頼れる家具職人です。
屋号の「ファニチャーホリック」は、直訳すると「家具中毒」。家具中毒ですか?との問いに、「そうですね、中毒ですね」と笑う山口さんは、父親や祖父の影響を受けて幼少の頃からとにかくなんでも自分で作るのが好きだったそう。なんでも分解しては壊していたという小学生時代には、すでに丸鋸を使い自分の手で犬小屋を作っていたという経歴の持ち主。「名作の家具が好きというわけでもなく、家具デザイナーにも詳しくないんです。そもそもなんでこの仕事をしているかというと、単純に作るのが好きだから。」
大学を卒業後一度は子供時代の夢を叶えるべく大手重機メーカーに設計士として就職したものの、やはり自分の手でものづくりがしたいという思いを捨てきれず、会社を退職し家具製作への道へ。その後家具製作の基礎から学びます。
使い手の満足をかなえるオーダー家具づくり。
木製家具の種類には、無垢材を使った家具と化粧合板などを使った家具とがあります。木目がきれいに揃うので、現在、一般的な住宅や大量生産されている家具のほとんどが合板です。家具職人として、お客様のいろんな要望に応えるためにも、無垢も合板もつくれる技術がほしいと常々考えていた山口さん。働いていた香川の会社は、無垢の家具も化粧合板の家具もつくるメーカーだったこともあり、ベストな環境でした。そこで腕を磨き、地元・越前市に戻ってからも、指物師のもとで2年間「越前箪笥」の伝統技術を学びました。そして、2012年に念願だった自分の工房『ファニチャーホリック』を設立しました。
『ファニチャーホリック』のオーダーメイド家具づくりは、お客様との対話からはじまります。会話の中で、どんなふうに使いたいか、好みのデザインや材質、予算などを引き出しながら、お客様の思い描く「こんな感じ」を再現した、暮らしに寄り添う家具を提案しています。「図面書いているときはワクワクします。お客様の満足をつくっているという感覚です」。
一生、家具中毒でいたい。
山口さんの活動は、越前市の工房内だけに留まりません。2014年には、福井県内の伝統的工芸品の若手職人のチーム『七人の侍』に、越前箪笥の職人としてメンバーに加わりました。7人の専門分野は、越前和紙、若狭塗、越前打刃物、越前箪笥、若狭めのう細工、越前焼。現代のライフスタイルになじむ、伝統工芸の新商品を作ろうというプロジェクトです。
最初の仕事は、西武福井店で洋服とコラボしたファッションショー。伝統工芸でファッションアイテムをつくるという企画でした。「越前箪笥の職人として参加する以上、箪笥を全面に出さないと意味がないと思い、何を作るべきか悩みました。そんな時、ショーのプロデューサーを担当されていた日本を代表するバッグデザイナーの由利佳一郎氏から、‟越前箪笥でキャリーバッグとかつくれないの?“と言われた事がきっかけで、キャリーバッグを作ることになりました」。
イベント当日、お披露目された山口さんの越前箪笥のキャリーバッグは、大きな反響を呼びました。「百貨店など、いろんなところから声がかかりました。やはり一般のお客様の直感が働くような範囲で勝負しないと、伝統工芸品は残っていかないと思うんです。第一印象で、これ可愛い!と、興味を持ってくれた方に、実はこういう歴史があって…と説明すると、さらに付加価値があがる。歴史背景や技術などは、それくらいの調味料的なものでいいと思うんですよね。オーダー家具も、越前箪笥も、いろんなお客様に魅力を知ってもらって、長く愛用していただけることが一番。これからも‟お客様ファースト”のスタイルは変わらずに、一生、家具中毒でいたいですね」。
ファニチャーホリック
福井県越前市大虫町6-2(地図)
TEL/0778-43-5375
営業時間/9:00~18:00
定休日/日曜、祝日
HP/https://furnitureholic.com