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迫力に圧倒される 巨大な岩塊『大矢谷白山神社の岩塊』

経ヶ岳からながれついた巨大な岩塊。

大矢谷(おおやだに)白山神社は、平泉寺白山神社から東南に約6.5km離れた勝山市の東南部にあります。巨大な岩塊は、約3万年前に経ヶ岳や保月山のの南西側部分が大規模崩壊を起こし、「なだれ」のように高速で流れ落ちた大量の岩塊や土砂が「岩屑(がんせつ)なだれ」となって落ちてきた岩塊と考えられています。

このような岩の塊は、勝山市の大矢谷付近に多くみられ、経ヶ岳や保月山から南方の大野市にかけてももたくさん見られます。

自然の神秘に包まれるパワースポット。

この巨大な岩塊は大矢谷白山神社の御神体で、寄り添うように建てられているのは拝殿と覆屋です。鳥居の手前には樹齢500年以上といわれるスギの巨木も。生命力みなぎる自然のパワーを感じずにはいられない、なんとも神秘的な景色が広がります。

地質学・考古学的にも貴重。

近づいてみると高さ23m、横幅40mの巨石の存在感に圧倒されます。岩の下の覆屋が今にも押しつぶされそうな迫力です。岩塊の岩陰には、泰澄大師が「一の宿」として籠もられたという伝説が残されています。岩塊の下からは縄文時代の石器や平安時代の須恵器なども見つかっているそうです。

大矢谷神社の岩塊は地質学上の重要な歴史を感じることができるジオサイトに指定されています。

手つかずの自然が残る”神の島”『雄島』

1200年万年前の溶岩からできた”神の島”。

坂井市三国町安島にある『雄島(おしま)』。越前海岸で一番大きな小島です。約1200万年前の溶岩からなり、周囲は鋭く切り立った断崖に囲まれています。島の南側は東尋坊でも見られる「柱状節理」からなり、北側では「板状節理」を見ることができます。昔から「神の島」と土地の人にあがめられ、1,000年の間斧が入れられていないと言われています。

海の青に朱塗りが映える全長224mの雄島橋を渡ると、1370年の歴史がある「大湊神社」の大鳥居とその両脇に鎮座する狛犬に迎えられます。鳥居をくぐり進むと「ヤブニッケイ」や「タブノキ」の樹木が生い茂る78段の石の階段があり、その先に福井県の文化財に指定されている大湊神社の拝殿があります。

自然の神秘を感じるパワースポット。

大湊神社にお参りした後は、雄島を1周する「雄島自然学習歩道」へ。手つかずの大自然を鑑賞しながら森の中を散策できます。見どころ満載の「探検の小径」を巡って、雄島の特異な自然景観を堪能するのがおすすめです。

方位磁針がくるう「磁石岩」や「瓜割の水」の他に、熱帯雨林によく見られる、互いの葉と葉が接触しないように成長する「クラウンシャイネス」という現象が見られるのも貴重。下から見上げると空が割れているように見える不思議な景色です。なぜ木々が感覚を空けて育つのかについては解明されていないそうです。

東尋坊から出発している観光遊覧船に乗ると海側からの雄島の景色を楽しめます。※橋の手前に42台分の無料駐車場あり。雄島は「越前加賀海岸国定公園」の「特別保護地区」にも指定されているため動植物の採取は禁じられています。

”目子媛”の伝説残る美しい山『部子山(へこさん)』

360度の展望。晴れた日には日本海も白山も見渡せる絶景。

大野市と池田町にまたがる『部子山(へこさん)』は、標高1,464.6メートル。池田町では最も標高が高い山です。継体天皇の妃「目子媛(めこひめ)」を祀った山で、古くは「目子嶽(めこだ/めのこだけ)」と呼ばれ、それがなまって「部子」になったと伝えられます。部子山は山頂付近まで道路が整備されているので、車で頂上付近まで上がることができます。駐車場から山頂へは20分ほどなので、ハイキング感覚で登ることができます。

山頂付近には、目子媛、継体天皇、猿田彦命(さるたひこのみこと)を祀る「部子神社跡」があります。山頂に登ると目子媛が祀られた小さな祠と二等三角点があり、昭和10年に建てられた皇太子誕生記念碑があります。頂上からは360度の展望があり、天気がよく空気が澄んだ日には、坂井市三国の海や大野の百名山の荒島岳や白山連峰まで見渡せます。

白タオル持参で、アサギマダラを観察。

夏の時期は渡り蝶「アサギマダラ」が飛来し、ヒヨドリ花で長旅の疲れをとってから山頂付近に漂う上昇気流に乗って空に舞い上がっていきます。白いタオルを振り回すと、花が揺れていると勘違いしてアサギマダラが寄ってくるのだとか。登山道近くの「能楽の里自然の森」跡も絶景撮影スポットです。美しいブナ林が広がり、水芭蕉も鑑賞できます。

秋にはあたり一面赤く染まる山肌を鑑賞。

秋には、ブナの原生林が紅葉し、山肌が赤く染まる美しい景色を堪能できます。秋の夕暮れには雲海が見られることもあります。

部子山への林道は、例年冬期は通行止めになります。また通行止めが発生する場合もあるので、道路情報をご確認ください。林道はカーブが多く道路幅が細いところもあります。通行には十分お気をつけください。また、熊など動物の出没にもご注意ください。

幻想的な森の中で、中世の歴史のロマンに浸る 『平泉寺白山神社』

自然の神秘。深い緑のなかで、日々の喧騒を忘れる。

福井県東部・奥越前の勝山市に位置し、かつては一大宗教都市だったことでも知られる『平泉寺白山神社』。「苔寺」としても知られ、広大な森の中に中世の遺跡が今も残る神秘的な場所です。地面を覆うように広がった苔のじゅうたんが、杉の大木の隙間から差す木漏れ日をうけてキラキラと光る様子から、雨があがった翌朝が一番美しいと言われています。

澄んだ空気を吸い込みながら幻想的な景色の中をすすんでいくうち、みるみる日常の喧騒が遠のいていきます。静寂に包まれた境内を、苔の美しい緑やかつては栄えた中世の名残りを味わいながら、ゆっくりと歩くのがおすすめです。

見どころたくさん。時間をかけてゆっくりとめぐりたい。

その昔僧侶が九頭竜川から石をひとつひとつ運んだと言われている参道の広い石の階段をあがって、国の名勝である「旧玄成院庭園」をゆっくりとまわりましょう。女神が現れたという逸話が残り「平泉寺」の名前の由来となった御手洗池や、「かおり風景100選」にも選ばれている「拝殿」前の杉林と苔のじゅうたんの景色などを見た後は、ぜひ「若宮神社」へ。神社前にある樹齢400年を超える大杉は、平泉寺の焼き討ちを生き延びただけあって、圧倒的な力強さを感じます。

今も発掘中。中世の遺跡がそのまま見れる。

今から約1300年前、泰澄によって開かれた白山信仰の拠点寺院として栄えた平泉寺。当時は広い境内に、48社、36堂、6,000の坊院が建ち並んでいたと伝えられていますが、その後戦国時代の一向一揆によりすべて焼き尽くされてしまいました。境内に残る破壊された仏像などからは、明治期の「廃仏毀釈運動」の名残も。

平成元年より本格的な発掘調査が始まると、なんと現在の境内の10倍以上の広さを持っていたことが判明しました。(ちなみに現在の境内は15万平方メートル)中世のものとしては国内最大規模の石畳の道や、多くの僧坊跡なども見つかっています。現在も発掘調査は続いていて、これからも土の下に眠る遺跡がつぎつぎと出てくる可能性があるという神秘に満ちた場所です。

歴史に思いを馳せれば、平泉寺のすごさがよりわかる。

時間に余裕があるなら、ガイドさんに案内してもらいながらまわるのがおすすめ。聞いておどろくような奥深い歴史のストーリーや、知らないと気づけない見どころなどをたっぷり教えてくれます。

静かな森の中に広がる苔のじゅうたんを見ているだけで癒される平泉寺ですが、歴史や由来を知るとさらにそのすごさがわかります。参道近くの「歴史探遊館 まほろば」では、平泉寺の歴史の詳しい紹介や発掘調査で出土した遺物の展示をみることができます。

ガイドの申し込みは7日前までにこちらから。

森林浴しながら、花はすの湯で癒される『花はす温泉 そまやま』

昼は露天で森林浴。夜は星空の下の寝湯で癒やされる。

はすの花の出荷数日本一をほこる花はすの里・南越前町。夏にはあたり一面ピンク色になる花はす公園に隣接する『花はす温泉 そまやま』では、木々の緑に癒されながら花はす入りの温泉が楽しめます。広々としたお庭の中にある露天風呂は、お湯につかりながら森林浴も同時に。マイナスイオンたっぷりな空間で温泉に浸かれる贅沢な空間です。

石造りの「寝湯」に寝そべりながらきれいな青空や、夜には星空を眺めてあったまるのもおすすめ。自然との一体感を味わえます。冬にはお庭を見渡せる内湯から雪景色を楽しみながらあったまるのもまた格別。季節ごとに行っている「ゆず湯」や「グレープフルーツ湯」「しょうが湯」などのかわり湯も人気です。

美人の代表「楊貴妃」も。あやかりたい、花はすパワー。

露天風呂がある緑豊かなお庭に面した内湯には、実際に地元南越前町で栽培された花はすから抽出された花はすのエキスが含まれています。「はす」には、滋養強壮や腸のはたらきをよくする効能があると言われていて、(作用には個人差あり)世界三大美人の一人「楊貴妃」も愛用していたのだとか。説得力バツグンです。

温泉に使われている花はすのエキスは、売店で買うこともできます。(500ml入り 1本 1,500円)着色料も添加物も使用されていない無添加のはすエキスで、お家でも気軽にはす湯を楽しめます。他にもはすにまつわるアイテムが多数ならぶ売店も「花はす温泉」ならでは。

見て、浸かって、食べて。マイナスイオンとともに、はすを満喫!

「花はす温泉そまやま」では、日帰り入浴だけでなく宿泊もできます。福井の旬の食材を盛り込んだ和食会席料理では、「花はすの里」ならではの、れんこんやはすの実を使った料理や花はすワインなども味わえます。施設内にはバーベキューガーデンやテニスコートなどのレジャー施設も充実。ステンドグラスがきれいな広々としたロビーには、読書コーナーやキッズスペースもあり、家族や友人同士でもゆったり過ごせます。

のどかな原風景と花はすの里で、自然と一体化した開放的な露天風呂と花はすの湯に癒やされるひとときを。マイナスイオンをたっぷり吸収しながら、とことんリフレッシュしたい時におすすめです。

泉質に自信あり オーシャンビューに癒される宿 『たかす荘』

とにかく一度、浸かってみて。お肌つるつる、疲れのとれ方を実感。

鷹巣海岸に面した日本海をながめるオーシャンビューの宿『たかす荘』。濾過も循環も加水加温もしていない、自家源泉100%かけ流しの温泉で、日帰り入浴もできます。「とにかく一度浸かってみて!」と自信たっぷりにすすめるたかす荘の温泉ソムリエ、北井さん。肌がつるつるになる、疲れがとれる、とお客さんからのフィードバックの多さがその自信の理由です。毎年田植えの後に入りに来るのを恒例にしている地元の方(疲れの取れ方がちがうんだとか!)や、全国から「ただいま」と通う常連さんも。

入った瞬間にとろっとしたやわらかさを感じるお湯は、水素濃度も高く保湿効果も。お風呂上がりのぽかぽか感が持続できます。浴槽は40度の温浴内湯、42度の高温浴内湯と、34〜38度の露天風呂の3種類。夏の時期には日本海に沈む夕日を眺めながら浸かれる露天風呂も。

どうつかる?温泉ソムリエが説く「入浴のススメ」

「たかす荘」には「温泉ソムリエ」がいます。(※常駐はしていません)「温泉ソムリエ」とは、泉質の分析や入浴法などをマスターして温泉ソムリエ協会から認定されている、まさに温泉のプロ。たかす荘の温泉はPH9.13(PH7.5以上で「美肌の湯」とされる)のアルカリ性単純温泉。肌にやさしいマルチビタミンのような泉質で、美肌効果も。お肌の古い角質をとって新陳代謝を促進するはたらきがあるといわれ、くすみがとれてツルツル肌に。

たかす荘の美人泉質を最大限に吸収したいなら、ぬるめのお湯にゆっくりつかるのがおすすめ。ぬるめのお湯は副交感神経に良いといわれ、自律神経を整える効果も期待できます。ソムリエのおすすめは、「温冷交互浴」。3分入浴後に冷水をかける。これを交互に3〜5回行います。末梢血管が拡張して血行がよくなり、老廃物を排出しやすくなるので、疲労回復にもよいそうです。他にもためになる温泉知識がいっぱい。詳しくはたかす荘のHPにも掲載されています。

日本海に沈む夕日をみながら、ゆったり過ごす解放タイム。

すべての客室から海が見えるたかす荘では、海を眺めながら新鮮なお魚料理をいただけます。日本海に沈む夕日やイカ釣り漁船の漁火をながめながら、ゆったりと過ごす至福の時間。

温泉宿のような娯楽施設はないけれど「なにもないほうがいい」とのこと。遠くの船や水平線をながめたり、歩いてすぐの亀島遊歩道を散歩してみたり。ゆたかな自然を感じながらゆっくりと過ごす時間に。そして豊かなお湯の質を心ゆくまで堪能する。なにかと忙しい現代人に、たかす荘の美肌の湯ではじめる「温活」、おすすめです。

九頭竜川の守護神 パワーみなぎる ”くろたつさん” 『毛谷黒龍神社』

金運・開運・無病息災。龍神様の強い力。

地元で「くろたつさん」の愛称で親しまれる『毛谷黒龍神社』は、実は日本古来の四大明神である黒龍大神さまが鎮座するというパワースポット。エネルギーが強いことで知られる、陰と陽を司る黒龍・白龍の二柱を祀っています。
開運・幸運・安全祈願はもちろん、金運や安産の神様としても知られています。

境内には「石渡八幡神社」と「西宮恵比須神社」もあり、参道の階段を上がると正面に黒龍神社の御本殿があります。

パワースポットだらけの境内。お参りのルートは?

拝殿を参ったあとは、反時計回りに境内を周りましょう。本殿横にあるのが境内社の「八幡神社」。その横にある「願かけ石」は、千年前に九頭竜川に落下した隕石を拾った村人により神社に奉納されたものと伝えられています。
願い事をかけて願かけ石の上にある石で3度打つと、運気が上がり、心眼成就が叶うと言われています。

次は「幸運の撫で石」を撫でましょう。神様の使いと言われる小龍、蛇が彫られた石は幸運と健康と豊穣を運ぶとされています。つづいて、厄を落としてくれる「厄割り石」へ。素焼きの杯(1枚100円)に自分の息を吹きかけた後で、厄割り石めがけて割ります。盃に息を吹きかけることで、災難や体の中の悪いものが盃に移るとのこと。厄年の方はぜひここで厄払いをしてみては。

ご利益にあやかりたいうわさの「龍の絵」。

毛谷黒龍神社を訪れたら、ぜひうわさの「龍の絵」を拝むのがおすすめです。
写真をとって玄関に飾ったり携帯電話やスマートフォンの待受けにすると、エネルギーの波動がよくなると言われています。この絵を見るために遠くから参拝に来られる方もいるそうです。

参拝者の間でも人気の御朱印は、「黒龍・白龍」が描かれた”くろたつさん”らしい御朱印です。

ライフスタイルからととのえる 朝と夜のヨーガ『LiveLight』

心地よい1日のためのルーティーンに。オンラインで始めるヨーガ。

「新しい生活様式」になり、日々の生活の中での「オン」と「オフ」のスイッチの大切さに気づいた人も多いはず。「オン」がむずかしかったり、「オフ」への区切りがうまくできなかったり。できれば朝はスッキリとした気持ちで始めたいし、夜は疲れをとってリラックスしながら眠りにつきたいものです。

木下克俊さんと留美さん夫婦によるヨーガスタジオ『LiveLight』では、気軽に自宅で参加できる、月2,000円のサブスクリプションによるオンラインでのヨーガクラスを実施しています。朝の「早朝ヨーガ」は毎朝5:00〜6:10、夜は女性限定の「ウーマンパジャマヨーガ」月〜金21:30〜22:00。時間に間に合わない方は、クラス後に配信される動画を見ながら自分時間でスタートできます。

呼吸と瞑想時間でマインドフルに。

克俊さんによる朝のヨーガでは、ストレッチや軽い筋トレも取り入れながら、一日の始まりとともに身体を起動していきます。瞑想時間では、座った状態で呼吸にフォーカス。「吸う」「吐く」に意識を集中していき、心の動きが静止する感覚に。ストレスを感じたり心がざわざわする時にも、呼吸法と瞑想時間で心と体のバランスがととのっていくのを感じます。

留美さんによる夜のヨーガでは、自律神経の通り道である背骨のラインを動かして呼吸を意識。女性のためのヨーガなので、骨盤や生殖器、自律神経のケアを中心に。ゆがみやむくみがとれて肩こりや腰痛の緩和にも。1日頑張った心と体の疲れを癒やしながら、心地よい睡眠時間へと体を導いていきます。夜しか時間をとれない人のためにも。

妊娠中や産後のヨーガ、親子で一緒にベビーヨーガも。

10代で体験した座禅が気に入り、その後比叡山で修行し僧侶となった克俊さん。20代の時に大きなケガをし、リハビリのため始めたのがヨーガとの出会いだったそう。妊娠や産後の不調を経験して克俊さんと一緒にヨーガを実践するうち、ヨーガが心と体の支えになりそのままそれが仕事になったという留美さん。対面でのヨーガクラスでは、妊娠中の不調のケアや出産までの心身の準備のための「マタニティヨーガ」、ママと赤ちゃんのための「ベビーヨーガ」や産後の骨盤ケアやストレスのための「産後のヨーガ」も行っています。

オンラインヨーガへの参加は、お電話や、メール、インスタグラムのDMでも受け付けています。理想的な自分に近づくため、ストレスとうまく付き合うため、生活習慣を整えるためにも。まずは自分ペースで気軽に参加できるオンラインヨーガから、毎日のルーティンに取り入れてみては。

移り変わる景色を”絵画”のように鑑賞『Brilliant Heart Museum』

一秒も同じ姿をとどめないアート作品。

坂井市三国町の雄島を見下ろす丘の上にある『Brilliant Heart Museum』。扉を開けると、大きな窓に絵画のように切り取られた美しい雄島の景色が視界に飛び込んできます。壁にあいた4m×1.5mの大窓が額縁となり、そこにすっぽりとおさまった雄島を”風景画”のように鑑賞できる美術館です。

手前に伸びる赤い橋と島の緑、両脇の海の青とその時の空の色。そのコントラストの美しさに、雄島が”神の島”と呼ばれる所以をあらためて感じます。窓の向こうの景色は、朝靄に浮かんだり、真っ赤な夕日を背負ったり、時には荒れる海や冬にはちらちらと舞う雪など、訪れる時の時間帯や天気によって変化します。時折横切る鳥や赤い橋を渡っていく人の姿も”作品”の一部のように見える不思議な感覚です。

感覚がとぎすまされる空間。どう使うのも自由。

三国町出身のアートディレクター戸田正寿氏プロデュースによるこの美術館は、他に類をみない不思議な空間の中でただ雄島の美しさとともに静かな時間を過ごせる、贅沢な場所です。晴れた日には、戸田氏考案の「Seijuカット」と呼ばれる特殊なクリスタルに太陽の光が反射し、虹色の光が空間を照らします。また日が落ちると壁自体が輝度を変えて「ライトフェイス」の照明が灯ります。

5,000年前の縄文土器の欠片500個をつかった作品「5千年の顔」は、5,000年の歴史とともに生命力を感じる作品です。空間には白いテーブルと椅子が置かれ、座ってただぼーっと時間を過ごすのも、作業時間に使うもよし。社員研修や打ち合わせに使用する方もいるそうです。(※飲食の持ち込みは不可)

雄島の美しさを再認識しながら心も洗われる。

戸田さんがこの美術館をつくることになったきっかけは、数十年前のできごと。著名な画家のサム・フランシス氏が来福した際、東尋坊の奥に見えた雄島に惹かれ同行していた婚約者の方が「この島を買いたい」と言ったほどこの島に心奪われていた様子が、その後もずっと心に残っていたそうです。

「美術館は教会。我々は教会をつくっているんだ」とは、戸田さんがニューヨークで同じくアートに携わる友人にいわれた言葉だそうです。言われてみれば美術館も教会も、訪れる人は静かになり心穏やかに帰っていく場所。この美術館にいると「お寺にいるような気分になる」という方も。

実際に近くで見てもきれいな雄島ですが、ここでじっくりと眺める雄島もまた違った感動があります。入館には事前予約が必要となります。入館料はお一人様2,000円(税込)、お抹茶またはワインと一口サイズのお菓子がつきます。夏季限定で夕陽を楽しむ特別企画も。(詳細は美術館HPにあり)

禅の世界に触れて心から癒やされる体験『永平寺 親禅の宿 柏樹関』

永平寺認定・禅コンシェルジュが導く”禅体験”。

永平寺で禅を体験しながら宿泊ができる『親禅の宿 柏樹関』。隣接する「栢樹庵」の客殿として2019年にオープンしました。本格旅館のおもてなしを受けながら、宿坊のような坐禅体験や質にこだわった精進料理など永平寺の”禅”の世界に触れることができます。

大本山永平寺より認定を受けた”禅コンシェルジュ”が常駐していて、坐禅指導や永平寺での朝のおつとめの案内、永平寺の境内のガイドもしてくれます。希望の方はロビー横にある「開也の間」にて禅コンシェルジュのガイダンスのもと、坐禅体験ができます。「開也」とは仏教用語で「茶席」の意。「いつでも開かれているのでいつでもお越しください」という意味だそうです。坐禅の時間に限らずいつでも自由に座って過ごすことができます。

快適に過ごせる空間とイメージをくつがえす美味しい”精進料理”。

全て永平寺川に面した18部屋の客室にはそれぞれに永平寺の絵天井の花の名前がつけられ、越前和紙の装飾や越前焼の洗面ボウルなど福井の伝統工芸品が所々に。一方で、全室無料Wi-Fi対応やAIスピーカーの設置など、現代のライフスタイルに合わせた便利なファシリティも。日の光を感じる明るい場所と照明を落とした落ち着く廊下など「陰翳礼讃」を意識した和の演出のなかに、便利で新しいものと”古き良き”がちょうどよく共存した居心地のよい空間です。

夜は永平寺の鐘の音が聞こえる露天風呂で、心まで癒されます。質素で薄味なイメージをもたれる精進料理ですが、こちらでは永平寺監修による、福井の旬の素材をいかし質にこだわった美味しい精進料理を堪能できます。福井地酒にこだわったお酒のメニューも。アレルギーがある方への対応も可能です。

永平寺で出会う、ここでしかできない貴重な体験。

宿泊した翌日の朝は、約700年続いている大本山永平寺での朝のおつとめへの参加ができます。早朝のため参加を迷う方も多いそうですが、荘厳な雰囲気のなか僧侶・修行僧による迫力ある読経に圧倒される”非日常”な体験に、皆さん「行ってよかった」と戻って来られるそうです。

「せっかくここに泊まるのだから、ぜひ他ではできない”禅体験”をして帰っていただきたい」と禅コンシェルジュさん。家事や仕事にと忙しい日常に追われている方、なにか新しい刺激を求めている時にも。時には姿勢を整えて自分と向き合う時間の大切さを教えてくれる、ここからはじめる”禅体験”、ぜひおすすめです。

森の中でほぐれる、極上リセット空間『リフレクソロジー なお舎』

マイナスイオンを感じながら、とことんゆるまるご褒美タイム。

三国の海から車で約3分、三国町の森の中にあるリフレクソロジーサロン『リフレクソロジー なお舎』。車を停めて坂を少しすすむと、木々に囲まれた小さな木建の小屋が見えてきます。

リフレクソロジスト澤村直子さんによるこちらのサロンでは、それぞれの方の好みや悩みに合わせてメニューの組み合わせや施術時間を決めていきます。完全予約制による午前と午後それぞれ一人ずつの限定で、じっくりと心ゆくまでほどけるリラックスタイムを過ごせます。

幼い頃から父親の足裏や背中に乗ったりしていた、という澤村さんのリフレクソロジーとの出会いは、たまたま地元のニュースで見たサロンで施術を受けたことがきっかけ。足の裏を触られているのに抵抗も感じず、むしろ気持ちよく感じて興味を持ったそう。その後2007年に資格取得後、地元福井、神奈川県茅ヶ崎でのサロン経験を経て、2018年に現在の場所で『リフレクソロジー なお舎』をオープン。

その日の気分や症状に合わせて、組み合わせ自由なメニュー。

足裏には、全身の臓器や器官が反射投影されていて、その1つ1つの場所を”反射区”と言います。その反射区を刺激することにより身体の「疲れた部分」を癒やして健やかに整えるのがリフレクソロジーの目的。なお舎の【リフレクソロジー】は、好みや症状により「パウダー」と「オイル」どちらかでの施術を選べます。

【ボディワーク】では、もみほぐすのではなくほどよく圧をかけたり”ロッキング”で揺らすことで、普段力が入って硬直している部分を脱力させ、筋肉をゆるませていきます。足を揺らしているのに頭まで揺れたり、普段力が入りがちな肩や腕、足の関節などがほぐれていく感覚が、とても心地がいいです。他にもじっくりとコリを和らげていく【オイルトリートメント】や、また最近では、脳の疲れにフォーカスした【アクセスバーズ】も気になるメニュー。

忙しい日々のリセットに「森の中でひとり時間」を。

目にした瞬間ほっこりと癒やされる木建の小屋は、澤村さんのご主人が念願だったという伝統的な「板倉建築」による畳6畳分のスペース。新緑やうぐいすの鳴き声が気持ちいい春や緑が濃くなる夏には、お天気がよければ戸を全開にして外で施術を受けているような感覚で。「実家の縁側にいるみたい」と言われることもあるそう。施術後に提供されるお茶を飲みながら、ゆっくりくつろいでいくお客様も。落ち葉の音や風が心地よい秋、ストーブのあたたかみを感じる冬。どの季節も自然を間近に感じながら気がつけば心まで癒やされるリセット時間は、この場所ならでは。

「皆さん生活の中で役割があり自分の時間を後回しにしがちなので、つかの間でもひとりの時間を作って欲しい。それを贅沢だと思わないで欲しい」と澤村さん。「せっかくリラックスしに来てもらっているので、いろんな意味で緊張させないように」心がけていると話す澤村さんの人柄もこの場所のような癒やし系。疲れを癒やしたくなったら、森の中で過ごすひとり時間でリセット、ぜひおすすめです。

疲れたら駆け込める、福井駅前の癒し処『心とカラダのプレミアムルーム Canade』

それぞれの悩みに合わせたリラクゼーション整体。

福井駅から徒歩約5分、新栄商店街にあるリラクゼーションサロン『心とカラダのプレミアムルーム Canade』。ベッド1つのみのこぢんまりとしたどこか落ち着く雰囲気の隠れ家的サロンで、一人一人の症状やお悩み、時間の都合などに合わせて施術メニューを選べます。

筋膜リリースやストレッチを組み合わせた「リラクゼーション整体」、手の平・手の甲・足の裏にある”反射区”を刺激する「フットリフレ」、頭痛や眼精疲労、小顔効果もある「ヘッドリフレ」などのメニューのどれか、または組み合わせも可能です。忙しい方は短い隙間時間にも、症状に合わせて種類を組み合わせた施術をじっくりと受けることもできます。

長く通うより、通わなくてもいいための施術を。

ご自身が過去に体を壊してしまい、その時に整体に通い始めたことで減量と症状の回復に成功したという体験をきっかけに、整体の技術を取得したという店主の半田さん。施術が始まると、とても丁寧に説明しながら疲れやコリの原因となる場所をほぐしてくれます。

肩や腰のコリも、足や背中のハリをほぐしたり、かたまった筋膜をほぐすことで改善することも。一人一人の身体の状態やハリ具合などをチェックしながら、それぞれに合う施術をしてくれます。「強めのマッサージを求める方もいらっしゃいますが、それでは根本的な改善にはならない。長く通ってもらうことより、通わなくてもいいようにするのが目的」と半田さん。疲れの原因や普段の生活の上でのアドバイスなども親切に教えてくれます。

プレミアムメンバーでさらにお得に。

1度の施術でスッキリほぐれて疲れをリセットはできても、また日々の疲れはたまっていくもの。定期的なメンテナンスに通いやすいように、メンバー会員制度を設けています。年会費などはかからず、最初の登録費2,000円のみで、65分の全身リラクゼーション整体を2,900円で受けることができます。メンバー会員のみのポイントカードで割引サービスや時間延長サービスなどもあり、とってもお得です。

短時間でもガチガチなコリが軽くなる施術と親切な接客に定評があり、比較的リーズナブルな価格設定と22時まで予約が可能なことからも、特に福井駅前で働く人の強い味方的なリラクゼーションサロン。疲れやストレスを感じたら、それは身体のコリやハリが原因かも?新規の方限定のサービスもあるので、疲れを癒やしたい時にはぜひ一度、心と体のリセットに。

好きな香りで癒やされるご褒美時間『アロマ&デトックス たまゆら』

アロマの香りに包まれて”幸せホルモン”たっぷり分泌。

脳から「オキシトシン」というホルモンが分泌されると、副交感神経の働きが活発になり自律神経のバランスが整うそうです。オキシトシンには不安な気持ちやストレスを緩和する作用があり、”幸せホルモン”とも呼ばれています。近年、アロマによってその”幸せホルモン”の分泌を促進できることが明らかに。

福井駅前の『アロマ&デトックス たまゆら』では、天然アロマオイルを使用したオールハンドの施術で、体だけでなく心まで癒やされるリラクゼーションサロンです。その日の体調や気分などをセラピストさんが丁寧にカウンセリングしながら、選んだ香りで”幸せホルモン”をたっぷりと分泌。とことんゆるむリラックスタイムを過ごせます。

心と体のデトックス。ゆらぎがちなマタニティ期にも。

アロマスクール卒業のセラピストさんによる施術メニューは、心と体のデトックスを目的とした「デトックスアロマトリートメント」が中心。「クイックアロマ」30分、「背中・脚・腕の60分コース、おすすめはリラックス後に満足して帰れるのにぴったりな全身90分コース。

また、妊娠中のゆらぎや不安定な心と体の症状によりそう「癒やしのマタニティアロマトリートメント」も。妊娠初期・中期・後期それぞれのタイミングやむくみ、冷え、腰痛などの悩みに合わせ、リラックスできる体勢で安心してトリートメントを受けられます。

ダイエット・体質改善・体内浄化を目的とし7つのダイエットアイテムを使用した「7日間デトックスプログラム」では、それぞれの体質のタイプに沿ったデトックス法をコーチング。おもに食事と生活習慣にフォーカスし、自分に合うデトックスを知る機会にも。デトックスプログラムが終わる頃にはみなさん肌がきれいになるのだとか。

疲れたら、アロマの香りでひとやすみ。

「アロマの香りをかぐことで心もほどけて距離も近くなる。施術後にはお客様の表情も明るくなるのがわかる」とセラピストさん。施術後には、その日使用した香りをペーパーにつけて持たせてくれるので、サロンから帰った後も同じ香りを感じながらリラックスできます。その紙をもって次回来店時に同じ香りのオイルを買い求めに来る方もいらっしゃるのだそう。

去年からは消毒やマスクなどのコロナ感染対策に加え、抗菌作用のあるローズマリーなどのエッセンシャルオイルを店内で活用しているのは、アロマセラピーサロンならでは。疲れた心や体のケアにも、自分へのご褒美時間にも、『たまゆら』で”香り”の効能を体験してみては。

ゆがみをなくして、健やかな美しさを『癒しの隠れ家TORIKO』

どんな年代、ライフステージにも。それぞれの人に合うケアを。

川合鷲塚と福井駅前にある隠れ家的リラクゼーションサロン『癒しの隠れ家TORIKO』。女性のライフステージの節目におとずれるあらゆる不調や悩みに沿って、内側から健やかな美しさを目指す「癒し重視」なサロンです。

施術メニューは、老廃物の排出をうながす「リンパ整体」や、「ゆがみをとる」ことを目的とした従来の「カイロプラクティック」に頭と仙骨の歪みをとる「クラニオ・セイクラル・セラピー」という技を混ぜ込んだ「スタイルセラピー」など、女性が気になるメニューばかり。丁寧にカウンセリングをしながら、それぞれの方の症状・悩みに合わせたメニューを提案してくれます。

めざすは体質改善。正しいケアから導く本当の「きれい」。

「健康であれば多少シワがあっても若々しく美しく見えるもの。表面だけの美しさでなく、目指しているのはそちらの美しさ。」と話す店主の櫻田さん。健康志向だった祖母の影響もあり学生時代から美容や健康法などに人一倍興味があったのだとか。カイロプラクティックの技術に出会い、姿勢を正すことで健康的かつスタイルもよくなれると知って、これだ!と思ったそうです。

店名の「TORIKO(トリコ)」は、「あなたを虜(とりこ)にする」という意味から。ソフトなケアに物足りなさを感じ強いマッサージを求める人もいるが、それでは根本的な体質改善にはならないため、しっかりとそれをお伝えしながらメニューの提案などもしているそうです。その結果症状が改善していき、「とりこにしていくんです(笑)」と櫻田さん。症状によっては1度で改善することも。

とにかく小顔がすごい!まずは短い時間からトライして。

特に人気の施術は「小顔コース」。顔のゆがみを整えリンパを流すことで、小顔感がアップするそう。1度の施術でも結果が目に見えてわかるので、ぜひおすすめです。頭がゆがんでいると背骨を流れる髄液の流れにも影響が。なので頭のゆがみをとることで、自然と体のゆがみもとれていくんだそうです。

結果がすごいと大人気の小顔コースをさらに進化させた「極上小顔コース」では、肌のケアまで。普段から顔のゆがみが気になる方や、結婚式の前や急な写真撮影の前に駆け込むもあり。より健やかにきれいでいるために、おすすめは定期的なケアですが、まずは短い時間からはじめてみるのも。「小顔がすごい!」と評判のTORIKOで、変化を体験してみては。

見て、学んで、感じる 和紙の魅力『卯立(うだつ)の工芸館』

”うだつ”のあがった江戸時代の紙漉き家屋。

江戸中期の紙漉き家屋を一度解体して移築復元し、平成9年に現在の場所でオープンした『卯立の工芸館』。「卯立(うだつ)」とは、日本家屋の屋根につけた小柱のことで、もともとは防火壁の意味合いが江戸時代に入り繁栄のしるしになっていったもの。そんな「うだつ」が家の”正面”にあげられた全国的にもめずらしい「妻入り卯立」が特徴です。


作業場でもある広い土間や囲炉裏、生活の場だった広い座敷など、訪れるとタイムスリップして江戸時代の紙漉きの家におじゃましているような感覚になります。そこで昔ながらの道具を使った伝統工芸士による手漉き和紙の工程を見ることができます。
2階では常時(展示入れ替え時を除く)さまざまな企画展示が行われ、越前和紙の魅力を鑑賞できる場所となっています。

染付け、すかし、模様。越前和紙の美しさはそのデザイン性。


京都から23年前に移住してきた紙漉き職人の村田さんは、服飾を学んでいた学生時代に和紙を使って洋服を作っていたのだとか。材料の和紙も自分で作ってみたいと和紙の展示会に行った際に出会ったのが、越前和紙。ずらりと並ぶ和紙の中で、そのデザインの豊富さや色のきれいさにひかれて越前和紙へ。今では伝統工芸士として手漉き和紙をつくるほかに、「越前生漉(きずき)鳥の子紙保存会」で指導もされています。

「鳥の子紙」とは「雁皮(がんぴ)」という材料で漉いた紙のこと。他の材料と違い生産にも時間を要する雁皮はとても繊細で、紙を漉く時もとても気をつかうのだそう。「ほんとに美しいよ〜、大好き」と目を輝かせる村田さん。こちらでは和紙の材料となる「雁皮」や「楮(こうぞ)」などの植栽も行っており、材料の準備から和紙ができあがるまでの工程すべてを一箇所で見ることができます。

工程をただ見るもよし、自分で漉いてみるもよし。

「卯立の工芸館」では、実際に手漉き和紙を体験することもできます。出来上がった和紙はそのまま持ち帰ることもできますが、最近は「朱印帳」にするのが人気だそう。自分で漉いた紙にきれいな色の表紙をつけて、自分だけのオリジナル朱印帳に。慣れない手で漉いた紙にでたシワも、味わい深い模様のひとつになります。

オープン以来お客様の案内、製造作業に携わるスタッフさんも「とにかく美しくて、手をかけた分とても愛おしい」と手漉き和紙の魅力を語ります。自分で漉いた紙で作った朱印帳を持って神社に行くのも楽しみの一つなんだそう。

立派な「うだつ」と1500年の歴史を誇る高度な技術と質の高い和紙の魅力にふれに、ぜひ一度「卯立の工芸館」へ足を運んでみては。

 

確かな技から生まれる好奇心をくすぐるデザイン『やなせ和紙』

”いま”につなぐ手漉き和紙の魅力。

越前市の今立五箇地区は1500年の歴史を誇る越前和紙の産地。その中でも紙漉き工房が多く立ち並ぶ大滝町にある『やなせ和紙』。大人2名で大きな桁(和紙を漉く道具)を動かしながら漉く”流し漉き”という技法を用いて、無地や模様をつけた「襖紙(ふすまがみ)」を中心に漉いています。

手漉き和紙職人の家に生まれた『やなせ和紙』2代目の柳瀬晴夫さんが紙を漉き始めたのは、まだ大学生だった頃。当時は漉けば売れていく忙しい時代でしたが、時代とともに住環境も変わり、襖の需要も減りました。

そんな中、日本各地の伝統工芸と現代のデザイナーとをつないで今のライフスタイルに調和する新しい商品を開発する「NEW DENSAN PROJECT」に参加。デザイナーの松山祥樹さんとのコラボレーションにより「Harukami」シリーズが誕生しました。

自然の造形美を和紙で表現した「Harukami」。

ころんとしたまあるいフォルムがかわいい和紙の箱「Harukami」シリーズ。スウェーデン語で「雲」を意味する名のとおり、ふんわりした色味の「moln(モルン)」と、実際に柳瀬さんが河原でひろってきた石をモデルにつくられたという「cobble(コブル/スウェーデン語で石の意)」の2種類があります。

和紙特有のやわらかな風合いでありながら、一枚一枚丁寧に漉きあげられた和紙で作られているので、とても丈夫。色味も石に似せた「cobble」は積み上げておくとまるで本物の石のよう。自然の造形美を和紙で表現したアート作品のような箱は、和の雰囲気にも現代のモダンなインテリアにも映えるデザイン。開け閉めする際の繊細な重なり具合にも癒やされます。

和紙は自然の材料からできている。自然に返せるのがいい。

越前和紙は元々できるだけお客様の要望に応えてきた産地。他で断られた方が県外から越前和紙に来ることも多いのだとか。「やったことがない模様やできるかわからない要望も一旦は受けてやってみる。その経験の積み重ねが糧となって技術やノウハウが広がっていく。」

機械漉きが増えた現在では、手漉きによる襖紙は貴重なものになりました。「わかる人でないと、手漉き和紙の良さはわからない」と柳瀬さん。それだけ機械漉きの技術は日々進化してきています。それでも「わかる人にはわかる。自分は見てすぐわかる」と手漉きでできることにこだわり続けてきました。見た目も軽さも触った時の滑らかさにも、手漉き和紙ならではの美しさがあります。

「和紙は自然の材料からできている。自然に返せるのがいい。」”和紙職人”という肩書がしっくりくる温和な雰囲気の柳瀬さん。「身のまわりにあるものを和紙で表現していきたい。」と、現在は襖紙や「Harukami」の他にも錆ついた金属を和紙で表現したパネルなどの製作も行っています。やなせ和紙の商品は、オンラインでも購入が可能です。

宮内庁御用達の”つくりのいい”漆器『丸山久右衛門商店』

ギャラリー兼カフェスペースでじっくり漆器にふれる。

鯖江市河和田で明治43年に創業・代々宮内庁御用達の老舗『丸山久右衛門商店』。
漆の質にこだわった、伝統意匠を感じる重厚なデザインの商品を中心に製造・販売しています。最近では現代の生活スタイルに合わせた「食洗機対応」の器やお箸なども。

2019年には築100年の古民家を改装したギャラリー工房「うるしギャラリー久右衛門」をオープン。ギャラリー兼工房の1階にはカップやお箸などの他に、めずらしい漆塗りのギターの展示なども見られます。2階はギャラリー兼カフェスペースとなっており、漆塗りのカップや器でコーヒーとお茶菓子を楽しめます。一人ずつ漆塗りのお膳で提供されるのは漆器店ならではの贅沢。

”肌のよい”漆器づくりへのこだわり。

福井県はかつて良質な漆が豊富にとれる漆掻きの中心地で、丸山さんが幼かった頃は、近くの山に行くと漆にかぶれるぞと注意されることもあったほど身近に漆の木があったそう。現代では全国的に漆の木も減り、外国産に頼らざるを得ないのが実情。近年は組合全体で漆の植樹を行う取組みが始められ、少しずつ産地で河和田の漆を使えるように。

「昔そうであったように、ゆくゆくは地場産の上質な漆を使った”肌のよい”漆器を作っていけるようになれば。」と丸山さん。「高いものでなくても、本物を使ってもらいたい。」と、漆器の仕上げには、なるべく最後は合成塗料などでなく本物の漆を使うことにこだわっているそうです。

伝統工芸士から直接学べる貴重な体験も。

こちらの工房では、伝統工芸士さんから直接学べる「塗り体験」「蒔絵体験」「沈金体験」ができます。それぞれの工程の職人さんの技を間近で見ながら、自分の好きな器を選んで体験ができます。体験後に工房で1ヶ月ほど乾燥してから、お客様のところに届けます。

使用する器は合成樹脂などでなく、必ず木製素材を使用。「塗り体験」をした器を持って、次は自分で塗った器に「蒔絵」や「沈金」をほどこしてみるのも楽しいです。自分の手で塗ったり蒔絵を書いたものを、大切な方への贈り物にされる方も。体験費は材料費・送料など含め5,000円。所要時間は体験後のカフェタイムを入れて約1時間。体験の予約はメールやお電話で、約2週間前までに。

「あったらいいな」が見つかる ウッドデザインプロ集団『ヤマト工芸』

職人技から生まれる、かゆいところに手が届くもの。

越前漆器のまち鯖江市河和田町で木工雑貨の製造・販売をしている『ヤマト工芸』。ステーショナリーからキッチン用品、時計にいたるまで、あらゆる生活雑貨が職人さんの熟練の技によりひとつひとつ丁寧につくられています。

TV番組などでも度々取り上げられるダストボックスは、中にセットするゴミ袋が見えない仕掛けが人気。サイドテーブルとして使えるものや、スイング式のフタ付きのものまで種類も豊富です。木目のナチュラルな見た目は、主張しすぎずどんなインテリアにも溶け込みます。他にもティッシュケースやスマホ立て、コロナ禍になってから誕生したマスク用クリップやマスクボックスなど。生活の中にあると便利な雑貨がたくさん。

「あったらいいな」を商品に。とにかく、やってみる。

ヤマト工芸の木工製品づくりの始まりは、元々は漆器の最初の工程である「木地づくり」の職人さんだった先代から。常により使い勝手のよいものを考える製品づくりは、アイデアマンだった父親のDNA、と話す高野社長。父親が40歳の若さで他界したときは、まだ10代だったそう。その頃は漆器がプラスチックに移行していた厳しい時代。なんとか食べていかなくては、と商品開発を続けてきた経験から、アイデアを出していくのはもうくせになっていると話す高野さんは、とてもエネルギッシュ。

「ものをつくるのは人間の本能」と現在は野菜づくりもされているそうです。畑で作業に集中していると、次の商品のアイデアがわいてくるのだとか。基本は自分が欲しいと思うもの、そしてお客様から頼まれたものを作ること。お客様からの要望は基本的に断らず、難しいものはできる方向を考えながら、可能な限りやってみるそうです。その試行錯誤から、新しい商品のアイデアが生まれることもあるのだそうです。

ものづくりを通して、まちづくりへとつないでいく。

開発・デザインから、木地づくり・組み立て・塗装、梱包・配送までのすべてを自社で行っているヤマト工芸では、現在約50人の職人さんが働いています。遠くから働きたいと河和田へ移住してくる若い人も。こんな田舎へ来てくれる人は稀有なので、できるだけ育てていきたいと受け入れることにしていると高野さん。

「技術を覚えるのは大変だけど、技術がわかればアイデアもわく。若い人が考えて、若い人が作り、若い人に使ってもらうのがいい。」過去には県外の木工関係の会社から相談を受けて色々とアドバイスしたことも。「ものづくりだけやっていても。まちが繁栄して地場産業にならないと。」人にもまちにも喜んでもらえるものづくりが、これからも「漆器のまち」づくりへ継がれていきます。
※ヤマト工芸の製品は、現在オンラインショップでのみの販売となっています。

暮らしにプラスして愛でたい漆器がずらり『土直漆器』

持ち歩きたくなる”うるし”アイテム。

漆器といえばお椀やお盆など食卓で使うものというイメージを一新する、タンブラーやアンブレラボトル(水筒)・名刺入れなどに漆をほどこした、新しい発想のアイテムが目をひく『土直漆器』。塗りや加飾などの作業を分業するところが多い河和田で、木地づくり以外のすべての工程を自社工房で行っています。

ステンレスと漆、という一見真逆の要素がうまく融合したタンブラーとアンブレラボトル。元々業務用漆器の生産が盛んでプラスチック製品などに塗装する技術も持っている「越前漆器」の産地の技術がつまった製品です。手に持った時の質感や、経年変化していく漆特有の特徴を楽しみながら永く使ってほしい、と『土直漆器』二代目の土田直東さん。

両手で包み込みたくなる、なんとも愛おしいフォルム「くるむ」。

ころん、としたフォルムが人気の「くるむ」シリーズ。欅の美しい木目を残し白漆を塗った「白」と、黒っぽい色が経年で青く変化していく「紺」の2色展開。小・中・大の組椀とカップがあり、重ねて収納も可能です。重ねた姿もまたなんとも心地よく、サイズ違いを揃えたくなるシリーズです。お椀の底の”高台”の部分がカーブになっていて、洗う時の水切りや拭きやすさなど、使い心地にもこだわりを感じるデザインです。

有田焼を代表する「源右衛門(げんえもん)窯」とのコラボレーションにより、梅地紋を施した同じフォルムの陶器の碗も誕生。漆器と陶器を重ねて収納できる、実用性とデザイン性を兼ね備えたシリーズは、いまの暮らしにもなじみのよい器です。

伝承しながら、新しい伝統をつくっていく。

他にもお酒を注ぐと器の内底の月がゆらゆらと揺れる様子が美しい酒器シリーズや、どれも洗練されたクラシックなデザインで選ぶのに苦労しそうなお箸(食洗機対応)なども。

「伝承されてきた技術をエッセンスとしながら自分たちが新しく開発したものを、次の世代が消化してまた新しい伝統をつくっていく、それが伝統工芸のいいところ。」と土田さん。「1,500年続いてきたものを今度は自分たちが伝えていかなくてはいけないという思いで作っている」という”土直漆器らしさ”が光る商品を、ぜひ暮らしにプラスしてみては。

上質を身近なものに これからの漆器に出会う『漆琳堂』

色彩はなやか。大人ときめく漆器革命のはじまり。

全国のセレクトショップでも人気の「aisomo cosomo」や「お椀や うちだ」の漆器。「本当にこれも漆塗り?」と疑いたくなるようなカラフルなお椀は、1793年創業、今年で228年目をむかえる老舗店『漆琳堂』のものです。

「小さい頃から祖父母に手が大きいからお椀を持つのに向いていると言われていた」という8代目の内田徹さん。2013年には塗師として当時最年少で伝統工芸士に。修行を始めて10年ほどで営業に行き始めると、ギフトショーなどに商品を持っていっても全く売れずに帰ってくるようなことがあったのだとか。料亭などで使われる蓋付きの吸物椀などをメインにしていて、どうやって若い世代に使ってもらうか、これからの漆器について考えはじめたのはその頃。

試行錯誤をかさね2009年に誕生した「aisomo cosomo」シリーズは、漆の良さをたくさんの人に知ってほしいとの思いからはじまりました。それまでの、黒と赤のシックで格調高い漆器のイメージを変える、ポップで華やかな色彩が印象的。お椀をふせた状態でもワクワクするような色使いも楽しいです。

伝統も革新も。直営店ならではの、選べる楽しさ。

全国のセレクトショップなどで取り扱われるようになり、直営店めがけて訪れるお客さんが増えたため、来てくれる人にちゃんと見てもらえるようにと、2016年に実店舗を構えました。

伝統的なデザインの器はもちろん、オリジナルブランドの「aisomo cosomo」のほかにも、和紙を使用したり、刷毛目がついていたり、内と外で色が違っているなど、産地に残る伝統的な技法を使ったシリーズ「お椀や うちだ」や、ものづくりの産地の底上げになればという思いから立ち上げられたシリーズ「RIN&CO.(リンアンドコー)」の商品なども並びます。

こだわらず柔軟に。必要としている人に届く器を。

「RIN&CO.」の”RIN”は”Reason In Northland”(北の地である理由)の略。漆器に限らない北陸のものづくりをテーマとしています。福井県・福井大学・産学官との連携により開発された「越前硬漆」を使った漆器は、傷が目立たないよう刷毛目を活かした「刷毛目塗り」を特徴とし、食洗機にも対応。現代のインテリアにも映える鮮やかなカラーは、どの色も絶妙で選ぶのに苦労しそうです。

ハレの日や人生の節目に贈る贈答品として使われる伝統的なお椀のセット。カラフルでいまの日常にしっくりくる器たち。「どちらにもそれぞれの特徴と魅力があって、それぞれに需要があるものだからこそ、必要としている人に届けたい。」と内田さん。越前漆器はもともと、こだわらず柔軟に求められるものを作ってきた産地。「200年以上の歴史を誇る漆器屋として。また、いまの時代だからできることを。」それぞれの暮らしになじむ漆器を『漆琳堂』で探してみては。

自分にも、あの人にも 永く愛せる「お気に入り」を『Hacoaダイレクトストア 福井店』

愛着を持って永く使いたくなる ”A級” 木製雑貨。

機能性やデザインにとことんこだわった木製雑貨がずらりと並ぶ『Hacoaダイレクトストア 福井店』。自然素材ならではのやさしい手ざわりや木目のやわらかい見た目に愛着を感じずにはいられない、魅力的なアイテムばかりです。

『Hacoa(ハコア)』の「a」は「永久」「A級」を意味するというその名の通り、細部にまでこだわりが見える実用性に長けたデザインや使い心地の良さにも、職人の妥協しないものづくりへの姿勢がみえます。

作る専門・売る専門に分かれていた時代から、今は工房や直営店に直接買いに行ける時代へと変わりつつあります。「お客様から直接声を聞けることが、ものづくりをしていることの醍醐味。」と取締役の市橋さん。全国に広がる店舗からのフィードバックを常に社内で共有しながら、商品づくりに生かしているそうです。

大人気!名入れで自分だけのスペシャル感。

ハコアの商品には、レーザー刻印による名入れができます。選んだ商品に名前やメッセージを刻印すれば、世界に一つだけの特別なギフトに。自分へのご褒美にはもちろん、記念の品や大切な人へのギフトとしても喜ばれること間違いなしです。
字体のフォントや位置の指定も可能。注文・会計後に最短で約30分で完成します。

また、同じ商品でも木の種類や木目の表情もそれぞれなのが木製品の特徴。実店舗では、見た目や触り心地を確認しながら、木の種類や好みの木目を選べます。

手にとるたびに感じるやさしい感触や、永く使って変わっていく見た目を楽しむこともできる木製アイテムは、身の回りの持ち物にプラスするだけで日々の生活に少しの癒やしと豊かさが加わります。

あらゆるシーンにマッチする普遍性のあるデザインや「木」ならではの個性が魅力的な自分だけのアイテムを探しに、ぜひ立ち寄ってみては。

点と線で描き 金を沈めて輝かせる 沈金師『冨田 忠志』

「塗り」の上に刀で彫って描きだす繊細な絵。

沈金とは、上塗りされた漆器の漆面の上に刃物で文様を「線」や「点」で彫り、彫ったあとにできた凹部に漆をすりこみ、そこに金粉や色粉などを沈めていく作業。細かな「線」や「点」で描く画はとても繊細で、そこに金粉を沈めると絵が光り輝き美しく浮かびあがります。

鯖江市河和田にある「沈金とみた立山公房」の二代目冨田立山(忠志)さんが、父親の初代冨田立山(信行)さんの後を継ぐと決心したのは高校生のころ。当時は父親のもとに取材がきたりテレビに出たりしているのをみながら、漠然と自分もあんな風に有名になりたいと思っていたそうです。

高校時代に美術の先生の勧めで大阪の美術学校の集中講習に参加したことが、冨田さんの沈金師人生の1度目の転機でした。毎日とにかくデッサンを描き続けたことで、絵を描く基本が身につき自信にもなったそう。高校卒業まで3回参加し、今でも絵型をつくる時にその経験が役立っているのだとか。

点彫りも線彫りもできるハイブリッド沈金師。

その後父親の計らいで、石川県輪島の三谷吾一氏のもとで沈金師として本格的に修行を始めます。輪島塗は「点」を重ねる「点彫り」の技法を使い、越前漆器は「線」を描く「線彫り」の技法が特徴。輪島から河和田に帰ってきたころは、刃物の持ち方まで違う越前漆器の線彫りに慣れずに苦労したのだとか。

今では点彫りも線彫りもできるハイブリッドと呼ばれることもあるそう。点を重ねてやわらかい印象にする絵と線で引いて力強さを出す絵など、描くモチーフによって使い分けているそうです。「両方できるのがいいと思えるようになるまでには5年ほどかかった。」と冨田さん。

いつか父が立っていたポジションまで。

冨田さんの2度めの転機は、父親である先代が病に倒れ突然工房の仕事を全て任されることになった時。その時初めて自分がやっていたのは全体の2、3割だったと気づき愕然としたそう。「病院に道具を持って行って父親に聞いたり、問屋さんに父親のつくった作品を探してもらいそれを見ながら彫ったり、とにかく必死でした。」2年間の闘病の末にお父様が他界。「悲しかったけど、それよりとにかく仕事をしないと。そこで覚悟がついた。」今でもあの時こう言っていたな、と思い出すことがたくさんあるそう。

今も日々の仕事はひたすら必死、でも展示会に出して入選した時には喜びを感じるという冨田さん。「いつか父が立っていたポジションまで。父が得意としていたモチーフの中で”富士山”なら立山さん、と言われるようになれれば。可能な限り挑戦し続けたい。」

筆使いと技法で文様をまく 蒔絵師『駒本 長信』

奥深き蒔絵の世界との出会い。

永平寺出身の駒本長信さんが河和田へ来ることになったのは、奥様の家業が蒔絵工房だったことから。25歳で『駒本蒔絵工房』で蒔絵職人だった義父に師事し、筆の持ち方や線の引き方など一から教わります。当時は仕事量が多くスピードが求められた時代。数をこなすうちに腕も上達し、仕事の流れも自然と身についていったのだとか。

そうして自信がついてくると、もっと深く蒔絵の世界を知りたいと思うようになったそうです。そんな時、京都で修行し河和田で独特の蒔絵を描いていた加藤さん(当時70歳)という方から「河和田の蒔絵ばかりもいいが自分のところに来て少し上を目指さないか」と声をかけられ通うことに。「手法・技法の面で数段深く、いい勉強をさせてもらった。」

もっといいものをという思いはさらに強くなり、その後加藤さんの下でともに教わった蒔絵職人仲間4,5人と「漆琳会」を結成。作品展などを行いながら切磋琢磨した経験は「今思うと底力になっている。ライバル心ももちろんあったが、同じ道を追求する者同士だから忌憚なく意見を言い合えた。今は飲み会ばっかりだけど。」

デザインと技法で生み出す美しい装飾。

蒔絵は、「塗り」の後に漆を筆につけ塗面に文様を描く装飾。主なものとして「平蒔絵」「研出蒔絵」「高蒔絵」などの種類があり、制作工程もそれぞれに違います。「平蒔絵」には「消し蒔絵」と「磨き蒔絵」があり、越前漆器の「平磨き蒔絵」は、独特のつやを出す点で一番優れていて、他の産地では真似できないものがあるといいます。

依頼が来ると、まずは図案を考えるところから始まります。図案が決まったら、仕上げまでの段階を頭でシミュレーションし、どの段階から始めていくかを考えて仕事にとりかかっていきます。あらゆる技法を周知していないとシミュレーションもできないため、作品づくりを通して技を磨いていったのだそう。「蒔絵は技術と図案と両方やらないとだめ。図案構成からあらゆる技法を使うので、総合力が要求される。蒔絵は最終工程なので、器の良し悪しを決める。その分責任も重大。」

機械にはできない漆の世界。それを大事に。

時代とともに技術も進歩し「スクリーン印刷」という技術も出現。昔と比べると手書きの蒔絵の需要も減少傾向になり、自ずと後継者も少なくなったそう。「時代の流れだから受け入れざるを得ない。でも機械にはできない漆の世界は絶対ある。それを大事にしていきたいと思う。」と駒本さん。

77歳になられた今もインターンシップ制度を利用して学びに来る学生や海外からの体験者などを積極的に受け入れています。「若い頃寝る間も惜しんで勉強したおかげで、今若い人が自分を頼ってくる。幸せだなと感じる。」と駒本さん。「今は2匹の猫と戯れながら悠々自適にやっています。」

現在『駒本蒔絵工房』では金継ぎ体験や蒔絵体験もできます。(予約制)
「どこかでこの技を残していきたいと思っている。私が加藤さんから教わったように、今自分が加藤さんのような立場になっていると思います。健康が続く限りやっていきたい。」

熟練の技が生み出す美しい曲線 丸物木地師『清水 正義』

「職人は死ぬまで完璧っちゅうことはない。」

漆器をつくる、まず最初の工程「木地づくり」。欅(けやき)や山桜、栃などの木材を「轆轤(ろくろ)」でまわしながら「鉋(かんな)」で削り、形をつくっていきます。お椀など丸い器をつくる「丸物木地師」、お盆や箱など四角いものをつくる「指物(角物)木地師」のほかに「くり物」「曲物」などもあります。15歳から修行を初めて「丸物木地師」歴65年の清水さんは御年80歳。

「79まで自分は死なんと思ってた。不死身やと思ってたのに。」80歳になって「不死身じゃなかった」と初めて気づいた、と真顔で話す清水さん。お話を聞いているとこちらが元気をもらえるパワースポットのような方です。実際の木地づくりを見せていただくと、「ここ、っていうときに鉋(かんな)を持つ手にすっと力を入れると、流れていく」その”すっと”に集中するといいものができるのだそう。「ま、職人死ぬまで完璧っちゅうことはないわの。」と笑います。

技術を覚えたら、腕だけは取られない。

河和田で木地職人の家に生まれた清水さん、とにかく「木」が好きでイヤになったことも辞めたいと思ったことも一度もないと断言。「イヤなことはするべきじゃない、でも仕事はある程度、好きになる努力も必要」。今の職人はとにかく売れるものを考えないと、と強調します。「昔は売れ筋のものを作っていれば売れた。今は人がやっていないことをやらないとね」。

生活スタイルの変化とともに、昔とくらべて漆器の出番は減ってきました。清水さんが木地づくりを始めた頃は河和田に120人ほどいた木地職人も、今では4人に。
「若いのは、あの子だけ」と指すのは、現在清水さんのもとで修行中の上杉瞭太朗さん、山梨県出身の25歳。清水さんのすごいところは技術だけでなく「常に新しいものを作りつづけるところ」そう話す上杉さんも、やっぱり昔から「木」が好きだったのだとか。「作り続ければ、技術は落ちることはない」と清水さん。「技術を覚えたら、その腕だけは取られない」。

変わらないことは、変わりつづけること。

長い木地職人人生の中で、どんどん売れた時代も思うように売れなくなった時代も経験してきた清水さん。プラスチックが出現したときは、危機を感じて負けられない、と感じたそう。時代とともに売れるものも変わっていくからこそ、柔軟でいないと。「でもどっちも売れないと。職人は売らないと一人前じゃない。売れないってことは一人前じゃない」。

逆に変わらないことはと尋ねると、「変わらないことはない。とにかく変わり続ける。」何が売れるかは、出してみないとわからない。でもパッと思いついたことは、とりあえずやってみるのだそう。「今も好き。楽しくてしかたない。人生、とにかく楽しむこと」。