Monthly Archives: 3月 2022

ここでしか出合えない“越”の味と魅力『御料理 一燈』

福井の味、北陸の味「越味(えつみ)」を堪能する。

さくら通りに面した『御料理 一燈』は、リノベーションされた古民家が目印。店内に見られる数寄屋造りが、和の趣を一層深いものにしています。腕を振るうのは、故郷福井をこよなく愛するオーナーシェフの倉橋紀宏さん。福井・石川・富山の四季折々の食材をふんだんに使った“越(北陸)の味”を提供しています。「例えば春なら越前町宮﨑地区の筍や九頭竜川のサクラマス。夏は池田町の鮎や鯖江市の吉川ナス。秋になれば大野・勝山の天然キノコや若狭の秋鯖、冬には越前蟹や日向(ひるが)の鰤など、福井だけで考えても豊かな食材に恵まれています。これが石川・富山と北陸に広がれば加賀野菜やホタルイカをはじめとした食材が加わり、表現できる世界は無限に広がるわけです」と話す倉橋さんは、良いものがあると聞けば北陸を中心として全国の生産者の元に自ら足を運び、確かな品質と味を兼ね備えた食材を仕入れています。

特に和食に不可欠である米は、自身も田植えや稲刈りに参加するほど力を入れています。「越前町宮崎地区で栽培されている『田んぼの天使』の完全無農薬のコシヒカリを使っているのですが、自分が携わると思い入れも深くなりますし、生産者さんもその思いに応えようとしてくれます」。味わいの深さは、丁寧に築き上げた信頼関係の証でもあるのです。

ハレの日にも、おもてなしにも。ペアリングも重要な要素。

『一燈』がファンの心を掴み続けているのは、料理においては言うまでもありませんが、食器や酒器など細部に亘っても“越”を表現しているからに他なりません。「越前漆器や越前焼、九谷焼といった器を中心に用いています。また、県外に行く際には骨董市や骨董品店にも頻繁に足を運ぶようにしています。そこで出合った江戸中期の器やオールドバカラなども、良い風情を醸してくれるんですよ」と倉橋さん。食器や設えに垣間見える気遣いもまた味わいを彩ることを理解している店だからこそ、大切な日に大切な人と足を運びたくなるのです。

それはお酒においても同じこと。コースで提供される料理に合わせるお酒はロングコースとハーフコース、日本酒とワインのミックスコースがあり、いずれも専属のソムリエによるペアリングを楽しむことができます。「福井・北陸を中心とした全国の地酒を揃えています。同じ銘柄でも季節で味わいが違ったり限定品があったりしますから、随時良いものをご提供できるように心がけています。県内の方には全国の銘柄から、県外の方には北陸の銘柄限定でペアリングということもできますので、お気軽にご相談ください」。旬の味わいの相乗効果は一期一会。ワインの品揃えも充実していますので、心行くまでお楽しみください。

肝になるのは、素朴な味と洗練された味の絶妙な融合。

京懐石がベースとなっている『一燈』の料理ですが、地域が育んできた味わい・調理法も取り入れながら“ここに来ないと味わえない唯一無二”を目指しています。
倉橋さんは、「北陸新幹線が開業したら、全国からお客様が来られます。特に都市部の方は、“わざわざ福井に食べに行く価値のあるもの”を求めています。それは田舎くさすぎてもいけませんし、都会にありがちな料理でもいけません。食の本質を突きつつも一歩先を行く。その塩梅が大切になります」と先を見据えています。

料理を見れば作り手が分かるという世界で「表現者でありたい」と話す倉橋さんの挑戦は、これからも私達の胸を高鳴らせ続けてくれることでしょう。

『猿の盃』ふらりと笑顔が集まる憩いの場

美味しいものが気軽にあれこれ楽しめる。

2006年にオープンした『猿の盃』は、「ミシュランガイド北陸2021」でミシュランプレート(※)を獲得した“ちょっといい”居酒屋。片町という立地柄、仕事帰りの会社員を多く見かけますが、若い世代からも広く愛されており、確実に入りたいなら平日でも予約をお勧めする人気店です。

こじんまりとした入り口は一見敷居が高そうに感じますが、一歩入るとその居心地の良さにホッとします。テーブル20席、カウンター6席、個室2部屋と、入口からは想像がつかない広さに驚かされますが、毎日欠かさず起こすという備長炭の香りがこれから始まる時間への期待を高めてくれます。

※ミシュランの基準をクリアしているお店に与えられる評価

たくさんの笑顔が見たいから。

席に着いて驚くのは、メニューの豊富さです。店主の鈴木さんは「お客さんの要望に応えるうちに、気付いたら100種類を超えていましたね」と笑います。豊富なメニューの素材は、季節や味わいによって全国各地から取り寄せているのだそう。福井名物の厚揚げや鯖のへしこ、北陸の海の幸・がさ海老や白海老をはじめ、全国の名物・くえ刺しや馬刺し、鶏天などが並び、目移りすること必至です。中でも日本酒好きに堪らないのが、自家製のからすみといかの塩辛。店主が試行錯誤を重ねて作り上げた一品、ずらりと並ぶお造りメニューと併せてぜひご賞味ください。

これほどバラエティ豊かに並ぶメニューですが、実は価格の表記がありません。これだけで緊張してしまう人もいると思いますが、何とぞご安心を。多くのメニューが一品1,000円前後となっており、ハズレのない味わいをリーズナブルに楽しめるのは嬉しい限りです。お通しから美味しいと評判の店の実力、存分にご堪能ください。

地酒も名物酎ハイも。

やはり居酒屋で気になるのは、お酒の取り揃えです。『猿の盃』ではビールはもちろん、酎ハイ、ハイボール、ワイン、泡盛に至るまで幅広く提供していますが、中でも日本酒の充実ぶりには目を見張るものがあります。地元福井からは黒龍、梵、越前岬、常山、白岳仙など県民にも広く愛されている銘柄が並びます。美味しいと聞きつけた県外の地酒も取り入れるようにしているとあって、日本酒好きとしては目移りしないほうが難しいほどのラインナップです。また常連客の間で人気なのが、ガリ酎ハイ。その名の通りガリ(新生姜の甘酢漬け)入りの酎ハイは、生姜の爽やかさとさっぱりした飲み口がクセになると好評です。

気持ち良いスタッフの対応もあって、ついつい長居したくなってしまう『猿の盃』。舌の肥えた県民を満足させてくれる気軽な居酒屋は、出張などで来福した県外ゲストにもお勧めの名店です。

時代に合わせた漆器の可能性を探求する『錦古里漆器店』

2019年、県内外から多くの人が訪れる漆器工房に。

鯖江市河和田地区にある『錦古里(きんこり)漆器店』は、兄弟二人で営む漆塗りの工房です。創業は昭和元年。漆器のなかでもお膳や重箱などの「角物(かくもの)」の製造・販売を手がけ、東京の高級料理店や老舗旅館などに卸してきました。

創業から90年以上の歴史のなかで転機となったのが2019年のこと。『錦古里漆器店』の敷地にデザイン事務所、観光案内所、伝統工芸品やオリジナル雑貨を扱うショップ、レンタサイクルなどの機能を持つ複合施設『TOURISTORE』が誕生したことをきっかけに、漆器の販売や本格的な漆塗り体験が楽しめる工房として生まれ変わったのです。

工房にお邪魔すると、大小さまざまな漆器や漆製品が並び、奥では実際に作業している様子を見学することもできます。工房の茶色の壁もすべて漆塗りだそう。休日になると県内外からさまざまな人が訪れます。

60歳を超えた今でも進化し続けている。

訪れた人に漆器や漆の魅力を伝えているのが、『錦古里漆器店』3代目の錦古里正孝(きんこり まさたか)さん。錦古里さんが手がけるのは、下地となる木地に漆を2~3回塗り重ねていく「上塗り」という工程。漆や器にわずかな塵やホコリがつかないよう、塗り出すまでの下準備に毎日2時間はかかるといいます。

塗り始めると、さらに集中力が研ぎ澄まされます。「漆は生き物なんです。気温や湿度で漆の粘さが日々変わるため、日によって刷毛を扱う感覚を変えていくことが大事」と錦古里さん。どんな漆のコンディションであっても常に一定の厚みで艶やかに塗り上げるその技術は、昨日や今日で習得できるものではありません。

「漆器職人になって50年近く経ちますが、本当に漆のことがわかってくるのは60歳超えてからですね。若い頃に比べて刷毛を操る感覚や力の抜き方が変わってきました。今でも進化し続けている手応えがある」と語ります。

塗りムラも味になる。あなただけの「漆器」作り。

漆器誕生から約1500年。時代や生活様式の変化によって、漆器は生活必需品から生活を豊かにする物へとその価値は変わってきました。普段の生活で漆器を使う機会が減り、昔ながらの漆器が売れなくなっているなか、錦古里さんは今の生活スタイルにあった新しい漆塗りを模索しています。そこで、若い世代にも漆の良さを知ってもらおうと生まれたのが「越前焼に漆を塗る」体験です。

従来の「漆器」と違い、陶器に塗ることで独特のツヤをまとい、唯一無二の作品に。多少のムラも味として楽しめると若い世代を中心に人気を集めています。今後は陶器に限らず、応相談で自分の愛着のある物に漆を塗る体験も始めたいと意欲を見せる錦古里さん。「若い世代からヒントをもらい、これからも時代に合ったものづくりをしていきたいですね」と笑顔で語っていただきました。

鮮やかなブルーの色彩と木目が調和した器『曽明漆器店』

海のような、空のような青のグラデーション。

深い海の底をのぞいているような、あるいは澄みきった空を眺めているような…。『曽明(そうめい)漆器店』が手がける『Kyutarou Blue』シリーズの器は、鮮やかなブルーの色彩に思わず見惚れてしまいます。

一つひとつ表情が異なる木目。ブルーの色が重なることでグラデーションのようになり、ある人は海、またある人は空のようだと例える人もいるそうです。

『曽明漆器店』は1923年に創業した漆器店。越前漆器を全国の百貨店や小売店に卸販売しており、初代曽明久太郎の名前を取った『漆器久太郎』という名前のネットショップも展開しています。

「もともと青色は食まわりに使うことがタブーと言われてきました。このあたりでも木と青を組み合わせた器を作っているところがなく、だったら自分で作ってみたいと思ったんです」と語るのは、『Kyutarou Blue』の生みの親である曽明晴奈(そうめい はるな)さん。2018年から開発をスタートし、2019年に展示会で出したところ大きな注目を集めました。

職人たちと二人三脚で生み出した美しい色彩。

『Kyutaro Blue』は、越前漆器の職人の高い技術によって生み出されています。漆ではなくウレタンを使うことで、美しい青とともに木目を表現。
ただ塗料を吹きつけただけでは木の表情が生かされないため、木目が見える半透明の青い塗料をまとわせ独特の表情を生み出しています。

色は、「スタンダード」と、「爽-sou-」の2種類。「スタンダード」はロイヤルブルーのような上品で美しい濃い青で、深い海の底を覗いているような神秘的な美しさが特徴です。一方、「爽-sou-」はスタンダードよりも明るく、西海岸を思わせるようなターコイズブルーの色は、カジュアルなインテリアにもよく似合います。

この色を出すまでにはさまざまな試行錯誤があったそう。「同じ塗料の配合でも気温や木地自体の色によって微妙に色が異なってしまうのです。どんなコンディションでも色がブレることなく安定した仕上がりになるよう、職人たちと二人三脚で取り組んできました」と曽明さんはいいます。

今のライフスタイルに合った漆器の魅力を発信。

『Kyutaro Blue』のシリーズでは、器やカトラリーなどさまざまな商品を展開しています。越前漆器の伝統と技術を受け継ぎ現代のライフスタイルにあわせた新しい食器は、女性だけでなく男性のファンも増えているとか。ショップにはこれまで漆器に馴染みがなかった若い人も訪れ、自分用やプレゼント用に選ぶ様子が見られます。

「初代の久太郎が築いてきたものを大切にしながら、今のライフスタイルにあったものを伝えていきたい」と語る曽明さん。ぜひ実際に手に取っていただき、画像では伝わりにくい木目と青の表情を感じていただきたいと思います。

京都で修行した店主の本場の日本料理を堪能する『和の食 忠兵衛』

アプローチを通れば高まるお料理への期待。

歴史ある風情を感じさせる福井市浜町に佇む『和の食 忠兵衛』。間口が狭く奥に長い『うなぎの寝床』といわれる京都の家屋を思わせるエントランスは、昼と夜でがらりと表情を変えます。店内は縁起が良い『褐色(かちいろ)』の紺色を基調に、越前和紙、河和田の漆器、若狭の塗箸など、福井の伝統工芸を積極的に取り入れています。

店主の山田祐士さんは、京都で日本料理を15年間学び、そのうち6年間は京都を代表する料亭『和久傳(わくでん)』で修行を重ねました。「本格的な京料理を基本としながら、福井の塩、醤油、味噌の調味料や食材、技法を取り入れて、気軽に楽しんでいただけたらと思い、浜町で店を始めました。おだしをきかせて食材の味を引き出していく本場の料理を目指してます。」と山田さん。「例えば〝蕪ってこういう味なんや〟という風に、野菜そのものの味がきちんとでているものが滋味深く、美味しいと思います」と信念を語ります。

素材の旨みを引き出す、京都仕込みの本場の味。

店名の「和」という言葉には、「食事をすることによってその場の空気が〝和む〟空間を提供できるよう」という想いがあるのだそう。「日本には四季があり、その時期のものが美味しいと修行中に感じたので、魚も野菜もその季節にしか味わえないものを召し上がっていただけたら」と言います。

会席は月替わりで素材を活かした献立となっています。一品料理は女性に人気の『生麩田楽』をはじめ、『うなぎ白焼き』、『鱧(はも)』、『のど黒』など旬の食材が並びます。「魚はどこでもとれますが、福井は漁港が近いのでお店に入ってくるまでの時間が早く、新鮮さが違う」と自信をみせます。

白ごはんのコシヒカリは、山田さんの出身地の大野産米を使用。「同じお米でも炊飯器で炊くのとでは全然違う」と、毎日土鍋で炊き上げています。「あくまで料理ありき」というお酒のセレクトは、秋田や富山など全国各地の名だたる日本酒が勢ぞろい。最近は、お客さまからのリクエストで福井の地酒も増えているそうです。

四季を大切にした〝和の食〟を気軽に楽しむ。

修行時代に修得した『鯖寿司』はテイクアウトも行っており、特に人気だそう。濃口醤油で炊き上げたシャリは、絶妙の塩梅で〆た肉厚の鯖と好相性。「ただ、年末から3月にかけての脂ののった時期にしかおすすめしていません」と、こだわりを貫きます。

ランチ、昼・夜の会席ともに、予約が必要。「お昼の営業はランチと会席それぞれ料理や席の形態が異なるため、どちらか先にご予約をいただいた料理のみの営業となります。」と山田さん。

ランチを利用した女性客が、ご主人やご家族を連れて夜の会席に訪れ、料理を満喫したご主人が次は仕事関係で通うなど、「ランチからつながっていくお客さまも多いですね」とニッコリ。月に何度も来られる方には会席の献立をその時々で変えるなど、細やかな心尽くしも人気の秘密のようです。

大人にこそ着けてほしい“本物”のアイウェア 『BOSTON CLUB SHOP SABAE』

“本場”だからこそ実現可能な、質を兼ね備えたデザイン。

1984年の創業以来、眼鏡の産地 鯖江に新しいアイディアと変革をもたらし続けている株式会社ボストンクラブの直営店『BOSTON CLUB SHOP SABAE(ボストンクラブショップサバエ)』は、著名人にも多くの愛用者を持つ眼鏡ショップ。インハウスデザイナー5人が各ブランドを担当しながら、年間約50モデルの新作を発表しています。

スタイリッシュながらも温かみを感じるショップの1階に並ぶのは、本社直営ならではの品揃えを誇る眼鏡の数々。一角には眼鏡をモチーフとしたチャームや、眼鏡の加工技術を応用したアクセサリーなども並べられています。「眼鏡は顔の中心で印象を作るものでもあるからこそ、品質が良いことは大前提。そのうえで、シーンや着ける人に最適なアイウェア(=目に着けるもの)をご提案したいと考えています」と話すのは代表の小松原さん。その高品質を支えているのは、言うまでもなく世界も認める鯖江の技術力です。信頼できる専門企業が500社以上もある一大産地にあるからこそ、ボストンクラブショップはデザイン性や機能性をとことん追求した“本物”を生み出し続けているのです。

こだわる理由がある、こだわる理由を伝える。

ボストンクラブショップサバエで出会えるオリジナルブランドは以下の4ブランドです。

【JAPONISM(ジャポニスム)】
ボストンクラブの旗艦ブランド。「メイド・イン・ジャパンのメガネを世界にアピールする」という理念を掲げ、世界に誇る鯖江の技術力と、既成概念に縛られないアイデアをベースに幅広いラインが揃います。

【BCPC(ベセペセ)】
BOSTON CLUB Pleasure Collectionの頭文字です。コスメのように色や質感にこだわり、単なる視力矯正器具ではなく、かけるだけで魅力を呼びさますアイウェアを提案しています。

【BOSTON CLUB(ボストンクラブ)】
創立時に製造していた社名を冠したブランドです。当時の若者の間で流行していた少しルーズでクラシカルなスタイルを新ブランドとして再生、メイド・イン・ジャパンの新たなジャパニーズトラディショナルを提唱しています。

【NORUT(ノーラット)】
常識や定型の範囲を超えた、型に嵌らないデザインをコンセプトに掲げるブランドです。
クラシカルな要素を纏ったシェイプにアイコニックな蝶番やプロダクト的なフレームの表情がMIXされた、ステレオタイプに縛られないデザインを追及しています。

特にジャポニスムは「メイド・イン・ジャパンにこだわる理由が詰まったブランド」でもあり、ひとかたならぬ思い入れがあります。それを感じ取れるのが、ショップ2Fにある「ジャポニスムミュージアム」。四半世紀以上に亘る道のりや変遷に触れることで、ジャポニスムの存在意義と価値だけでなく、“真のブランド価値”を持つ逸品を身につける重要性に気付かせてくれるはずです。

語り継ぎたい気品と格好良さ。

「今はお手頃な眼鏡も出回っていますが、私たちは“多少高くても、良いものを長く使ってほしい”と考えています。例えば、時計では“お父さんが使ってたあの格好いいヤツを譲り受けたい”ということがよくありますが、眼鏡でも同様にメンテナンスを入れながら世代を超えて長く愛されるのが私たちの目標です」と小松原さん。

その本物志向は、ショップの内装にまで行き届いています。冒頭で触れた「スタイリッシュながらも温かみを感じる」空間は、越前和紙や越前漆器の木工技術など、地場の伝統工芸・産業を随所に散りばめているからこそ醸し出せる温もりと味わいに満ちているのです。「“本物”に囲まれながら“本物”と巡り合ってほしい」という心遣い溢れる空間で、新しい世界を見せてくれる運命の一本との出会いをお楽しみください。

『地中海食堂 Tondo』 美味しい料理とワインの幸福な出会い

料理とワインを、みんなでワイワイ気軽に楽しもう。

今年10周年を迎える、福井市二の宮の地中海食堂『Tondo』。オーナーの加藤陽祐さんと奥さまが、イタリアンをはじめ季節の海・山・里の食材を取り入れた地中海料理を振る舞っています。

「イタリア料理店で7年ほど修行したのですが、イタリアンだけじゃなくパエリアやアヒージョとかも提供したいので〝地中海〟と名付けたらいろんなものをお客さまに提供できるかなと思ったんです」とおおらかに笑う加藤さん。ピザ、パスタ、リゾットをはじめ、多彩なアンティパストからソースにこだわった肉料理や魚介料理まで、地元福井はもちろん世界中から取り寄せたこだわりの素材を使い、スパイスをきかせた料理を提供しています。

「お客さまが気軽にワイワイおしゃべりできる、ワインと料理を楽しむお店」をイメージした店内は、木とレンガをベースにした温かみのある居心地のいい空間。加藤さんが集めた色鮮やかな陶器の絵皿やD.I.Yによるステンドグラスの額などが、異国の雰囲気を醸しています。

美味しい食材とワインを、国内外から取り揃えて。

常に、新しい素材やメニューを探究している加藤さん。以前、東京のイタリアンで食べた福岡県の赤崎牛の美味しさに魅かれ、今では生産者と直接取引を行っているといいます。肉質がきめ細やかでやわらかい生後25ヶ月以内のメスの赤崎牛のヒレ肉のみを使ったカツレツやグリル、パスタとからめたボロネーゼなど、どれもお客さまに好評で、確かな手応えを感じています。

『いろいろ魚介たっぷりのパエリア』をはじめ、季節の素材を厳選したメニューも充実。イタリアから届く春のホワイトアスパラガス。実家の父が丁寧に育てたみずみずしい夏トマト。「きのこの王様」と呼ばれる香り豊かな秋のポルチーニ茸。冬はタラ、牡蠣、かになど、多彩な魚介が登場します。なかでも『牡蠣のグラタン』は「開店時から、ずっと人気ですね」とニッコリ。

「ワインを気軽に楽しんで欲しい」という想いから、ワインカクテルやサングリアもご用意。ワインは、イタリアはもちろんスペイン、フランス、アメリカ、ポルトガルなど充実のラインナップです。「料理との相性など、ワインは飲んでも飲んでも奥が深くて追いつかない」と、その醍醐味を語ります。

豊富なテイクアウト。オリジナル商品も計画中。

生ショウガと香辛料でつくる自家製ジンジャーも、隠れた人気メニューだそう。「地元の友達の農園などから仕入れてるのですが、6〜10月の新ショウガの季節は香りが良く、辛味もまろやかです」と加藤さん。定番の『ジンジャーエール』は、若い方からご年配の方まで幅広く好まれています。

コロナ禍をきっかけに、2年前からテイクアウトもスタート。こちらも定期的にメニューを変えて、季節の味わいを多彩に提供しています。今後は、「福井産玉子を使ったマヨネーズなど、家庭でも使えるようなオリジナルの調味料づくりも手がけてみたい」と新しい試みも計画中です。

そんなお店の最新情報をくわしく伝えてくれるのが、毎月発刊の『Tondoたより』です。文章もイラストも奥さまの手書きで、すでに100号を超えているそう。お客さまの美味しい笑顔に誠実に向き合うオーナー夫婦の実直な人柄も、他では味わえないこの店ならではのご馳走です。

めがねのまち・鯖江を多彩に楽しめる『西山公園』

暖かな春を鮮やかに染め上げる満開のつつじ。

まちのいたるところで眼鏡のマークやモニュメントを見ることができる、めがねのまち・鯖江市。そのほぼ中心に位置するのが西山公園です。東京ディズニーランドと同じ約56ヘクタールの敷地には、芝生広場や展望台、動物園や日本庭園、アスレチックや道の駅など、多くの世代が楽しめる施設が集まっています。

園内をぐるっと囲むのが、約5万株のつつじ。1950年代後半(昭和30年代中頃)から植えられ、市民が提供した約2,000株のつつじを手をかけて少しずつ増やしてきました。日本各地につつじの名所は沢山ありますが、西山公園の特徴は、約360度つつじを眺めることができる「パノラマ的」な楽しみ方。色とりどりのつつじに、目を奪われるはずです。

毎年5月のゴールデンウィークに開催される「つつじまつり」の期間中は、県内外から多くの人でにぎわいます。夜間ライトアップもされ、落ち着いた空気の中で昼とは違う様子を見せるつつじを愛でるのもまた一興です。

東の高台に佇む、かつての藩主によって整備された日本庭園。

西山公園の北東側の遊歩道を上っていくと姿を現すのが、池や東屋を兼ね備えた池泉回遊式の「嚮陽庭園」。鯖江藩の第7代藩主・間部詮勝(まなべあきかつ)公が、領民に憩いの場を与えたいという思いから整備したと言われています。

高台にあるため、春は桜に彩られる西山公園を眼下に見下ろすことができ、秋は楓などの紅葉樹が、池の水面に「逆さ紅葉」として浮かび上がります。毎年11月1日~30日の間はライトアップもされる(午後6時~9時)ので、秋の夜に色を添える紅葉を楽しむこともできます。

日本一小さい動物園で、愛らしいレッサーパンダに出会う。

そして、子どもから大人まで人気を集めているのが、国内最小の動物園としても知られる「西山動物園」。およそ12種類の動物や鳥類が飼育されていますが、中でも注目はレッサーパンダ。繁殖数では国内で有数を誇り、ここで誕生したレッサーパンダたちが全国各地の動物園で活躍しています。

2016年には「レッサーパンダのいえ」が登場。屋内展示や屋外展示の他、生態などを展示するギャラリー、来園者が休憩や多目的に使えるちょっとしたラウンジもあり、天井が約8mの開放感のある屋内展示には、レッサーパンダが地上3~5mを自由きままに回遊できる遊具や、来園者の頭上に渡されたブリッジが設けられており、より間近で見ることができます。

つつじや桜、紅葉などの自然だけでなく、多彩な楽しみ方ができる西山公園に、ぜひ足を運んでみてください。

『LINO』丸岡城のふもとで味わう本格イタリアン

ハズレなし!何を食べても美味しい名店。

坂井市丸岡地区、丸岡城のお膝元にあるイタリア料理の人気店『LINO』。本場イタリアでも修業したというオーナーシェフの宮越さんが手がける料理はいずれも絶品で、「どのメニューを頼んでも満足できる」と足繁く通うファンが多いお店です。

ここに来て一番困るのは、メニューが豊富すぎること。ランチでもパスタ30種類、ピザ10種類から選べることに驚きますが、ディナーではさらに前菜、リゾット、メイン料理などがさらに充実し、まさに至れり尽くせり。この豊富さには、オーナーの「イタリアンだからといって肩ひじ張らずに気軽に楽しんでほしい」との思いが込められていると同時に、お子様からご高齢の方まで幅広い年齢層が“選ぶ楽しみ”から味わえるようにとの心遣いが現れているのです。こんなにメニューを取り揃えながらも全てが美味しいのですから、通い詰める常連客が多いのも納得です。

おすすめは、シェフの思い出の味。

豊富なメニューにそれぞれのファンがいるため、「味を変えないっていうのが意外と大変なんですよ」と笑うオーナー。仕入れる食材は風味・鮮度・濃度などを吟味し、一度「これ!」と決めたら同じものを使い続けることで、安定した味わいをキープしています。

その中でも人気なのが『ボンゴレビアンコ』。宮越さんが修業時代に訪れたイタリアのカプリ島で衝撃を受けた味に近づけようと、研究を重ねて辿り着いた思い入れの強い一品です。口に入れた瞬間にアサリの香りが鼻に抜けるソースは、「こんなに旨味が詰まったボンゴレは食べた事ない!」と驚くこと間違いなし。この衝撃は、ぜひご自身の舌でお確かめください。

また、クリスピーな生地に旬の食材をふんだんにトッピングしたピザも併せてご堪能を。福井では珍しい極薄のカリカリ生地は、具材の味や食感をダイレクトに伝えてくれるので、食べていてとても心地よい一品です。ワインとの相性も良く、お気に入りの組み合わせを見つけるのも心が弾みます。もちろんドルチェもお忘れなく。店名が付いたティラミスは、コーヒーとラム酒が優しく香り、お子様でも食べられる仕上がりになっています。軽いながらも満足度の高い味わいは、寛ぎのひと時と元気を運んできてくれますので、ぜひお試しを

少人数でも、大勢でも。

オーナーの「ファミレスのように気軽に使ってほしい」との言葉通り、気の置けない人との食事にぴったりの空気感がありながらも、記念日などの特別な日にも最適な『LINO』。予算やメニューなども気軽に相談できるだけでなく、ウエディングパーティーなどの貸し切り(30名以上)もお願いできます。会社や町内会などの会合の際には一部貸し切りにもできますので、シーンに合わせたご利用をどうぞ。

気さくなオーナーの温かい心遣いが詰まった本場のイタリアン、ぜひご賞味ください。

北前船の歴史に触れる、隠れ家的フレンチレストラン『畝来』

日本遺産の中、北前船主の邸宅でフレンチを。

江戸から明治にかけ、北前船の中継地として栄えた南越前町河野。2019年には、北前船寄港地・船主集落として日本遺産に認定されています。河野北前船主通りには今も北前船主の邸宅があり、日本海五大船主である右近家の館は『北前船主の館 右近家』として資料館になっています。

『畝来(うら)』は、『北前船主の館 右近家』の敷地にある隠れ家的フレンチレストラン。大正時代に右近家11代当主が建てた邸宅を復元した建物内にあり、窓から日本海や日本庭園を眺めることが。2階の個室(別途料金)からは、日本海のパノラマを一望することができます。

オーナーの宮本浩司さんは、地元河野出身。「地元の魚を食べるとき、以前は旅館や民宿などの和食しかなかったんです。それで、もともと観光協会のお客さま用にフリーで使っていた場所を活かし、フレンチのレストランをすることになりました」と開業当時を振り返ります。

四季を味わうフレンチ、郷土料理のアレンジも。

宮本さんが提供するのは、農薬を使わない自然栽培の野菜や、地元のとれたての旬の魚介などを使ったフレンチのランチ&スイーツ。自然栽培豆を使うサイフォン抽出のコーヒーも人気です。

季節ごとにメニューは変わり、春は山菜、夏はアワビ、秋は魚介、冬は越前がになど、四季折々の食材の魅力を引きだす料理が登場します。なかでも、セイコガニをまるまる一杯贅沢に使ったパスタ&リゾットは、「これを目当てに来るお客さまが9割」という冬の大人気メニューです。

ランチの前菜には、地元の郷土料理をアレンジしたものも。殻ごとのせいこがにを大根おろしと一緒に煮て味噌で味付けした家庭の味『せいげ』をフレンチ風に仕上げた一品は、素朴でありながら上品な風味。アクセントにつけられた味噌は、北前船の船内で食べていたものを地元の人が再現したもので、長旅にもつよう味が濃く、甘みがあります。また、地元で収穫した完熟梅を使った『梅のコーヒー煮』も、楽しみにしているファンが多い一品です。

豊かな自然の中、食を通して地元を盛り上げる。

宮本さんが自然栽培の食材に関心を持ったのは、『奇跡のリンゴ』で知られるリンゴ農家 木村明則さんがきっかけです。あるときテレビ番組で木村さんを観た宮本さんは、会社を辞めヨーロッパへ。フランスのワイン用ぶどうを作るオーガニック農場で半年働き、帰国後、サバエシティホテルで2年間料理の修行をしたといいます。

『畝来』を始めてから、地域の人とのつながりも広がったという宮本さん。食で地元を盛り上げたいという共通の想いから、河野の旅館や民宿などの厨房に立つ仲間と完全予約制の『炊(かしき)の会』を開催。食後は仲間の営む宿で宿泊もでき、観光面での広がりも期待されています。

実は、船舶免許も持つ宮本さん。自分でとった鮮魚をさばき、全国にネット通販できるよう現在準備中です。他にも、福井のワインカレッジ一期生として福井産のワイン造りに関わるなど、豊かな自然に恵まれた環境の中で「やりたいことはけっこうありますね」と笑顔がこぼれます。

古い町並みと越前指物の技を今に残す『三崎タンス店』

家具屋が並ぶ、歴史あるレトロな『タンス町通り』。

越前市の旧北陸道沿いにある『タンス町通り』。その名の通り、家具の製造販売や建具などを手がける店が集う全国的にも珍しいエリアです。『三崎タンス店』は、江戸時代末期にこの地で指物師として活躍した初代 三崎半三郎が創業。江戸末期に建てられたといわれる築150年を超える店舗は、『府中まちなか博物館』および『ふくいの伝統的民家』に指定されています。

「江戸後期から木工技術を持った職人が住み始め、昭和初期頃にタンス造りの職人が中心となってできた歴史ある通り。明治8年の古い地図には『三崎屋』の名が記されています」と語る、8代目 三崎俊幸さん。

かつて15〜16軒あった家具屋は、製造の機械化による騒音の理由もあり、多くが郊外の工業団地に移転。今では『三崎タンス店』を含め5〜6軒しかありません。それでも、古い建物が残る通りには、今もタンスに関する金具屋などの看板が見られ、昔の面影を感じることができます。

江戸から令和、いくつもの時代を超えて受け継ぐ手技。

「江戸末期から明治時代、うちでは寺社仏閣などの指物の他に、商家の金庫代わりとして使われた越前箪笥を造っていました」と三崎さん。桐やケヤキを使い鉄製金具や漆塗で装飾した越前箪笥は堅牢で、火事のとき外へ出せるよう車輪がついているのだそう。「越前箪笥は300年もつといわれています。うちには先祖が造った150年の越前箪笥があり、まだ折り返し地点ですね」とニッコリ。

大正から昭和の頃は、嫁入り道具の総桐たんすが主流に。職人歴20年の三崎さんは、「桐たんす造りは、ノミやカンナを使って、1個1個の引き出しがぴったりしまるよう丁寧に手であわせていきます。時が経っても洗い直せば美しく甦り、修理しながら長く使えます」と胸を張ります。

平成〜令和に移ると、無垢の木を使った一枚板のテーブルや棚など、越前指物の意匠や技を受け継ぎながら、現代のライフスタイルにあったデザイン家具も手がけるようになったといいます。

ものづくりとまちづくり、人との出会いを未来へつなぐ。

三崎さんは近年、業種を超えたコラボレーションにも挑戦しています。地元の仏壇店&石材店と企画したオリジナル家具『縁ディング箪笥Yui』は、一見趣ある小型の越前箪笥の中に、思い出の品や遺骨、仏具などを納めることができ、日常の中で気軽に手を合わせられます。

地元商店街の有志と実行委員会をつくり、約10年にわたり『昭和の花嫁行列』を企画・開催。コロナ禍で2年間中止していましたが、今年は10月に開催を予定し、『タンス町通り』を華やかな婚礼衣装をまとった新郎新婦と、箪笥などの道具を担いだ行列が練り歩きます。

2年後の北陸新幹線延伸開業を見据える三崎さん。「ものづくりのアイデアはお客さまと話す中ででることが多く、ネットだとなかなか生の声が聞けません。この辺は半径15キロ以内に越前漆器、越前和紙、越前打刃物、越前焼、越前箪笥の5つの伝統工芸があり、ぜひ都会からこちらに来てもらい、伝統工芸の産業を巡ってもらえたら」と意気込みます。

「絶景」も「美味しい」も「癒し」も。あなただけの『東尋坊』を見つける旅

春夏秋冬、様々な表情で魅せてくれる、大自然のアート。

福井きっての絶景スポット『東尋坊』。20m級のダイナミックな岩壁が約1㎞にわたって広がっています。このような波の浸食によって荒々しくカットされた輝石安山岩の柱状節理が広範囲に連なっているのは、世界に3ヵ所しかなく、まさに偉大な自然がつくりだした岩のアートです。

穏やかな春の海、青い空と群青に染まる夏の海、太陽が沈み行く夕景が楽しめる秋、雪が舞うころの打ち寄せる荒波と吹きつける寒風。どれも東尋坊と日本海の大自然が魅せてくれる、四季折々の美しい風景です。断崖絶壁からの眺めはもちろん、風がつくりだす針葉樹の森の中の散歩道「荒磯遊歩道」や、商店街で出会う地域の人たちとのあたたかな交流や郷土の味……雄大な自然に抱かれた土地を、ゆったり散策してまわれば、心も自然と穏やかになれるはずです。

フォトジェニックな景色が待つ、船の旅。

ごつごつした岩肌の上を歩いて、断崖に立つ。フェンスや手すりなど、さえぎるものが何もない目の前に広がる360℃の大パノラマには、思わず息を飲むほど。打ち寄せる波の音や風、潮のにおい、五感が研ぎ澄まされていく感覚がとてもうれしい。

そして、「東尋坊のいろんな表情をもっと楽しみたい」という方におススメなのが、東尋坊観光遊覧船(1周約30分・中学生以上1500円 ※12/29~1/31は全便運休)のクルーズ。岩の壁が迫ってくるような東尋坊をはじめ、ライオン岩やろうそく岩など、周辺のスポットの海上からの眺めも圧巻で、思わず写真を撮りたくなるような絶景にきっとあなたも魅了されるはずです。また、昔から神の島とあがめられたパワースポット『雄島』の方へも周遊をしてくれます。

人情味あふれる、海の側の商店街へ。

東尋坊散策の大きな楽しみの1つは、やっぱり「食」。東尋坊商店街は、食事処や土産物店、食べ歩きフード&ドリンク店など、東尋坊の崖の前まで約300mにわたって続くアットホームな商店街です。東尋坊のあとさきで出会う商店街の人たちの人懐っこい笑顔やあたたかなふれあい、店頭で焼いている新鮮な海の幸を使った浜焼きや豪華な海鮮丼をはじめとする郷土の味、そして個性豊かな特産品の数々。自然の眺望とともに、旅の記憶をより印象的なものにしてくれるでしょう。

『鈴廼園』竹田の豊かな自然に抱かれた隠れ家カフェ

店主の“好き”が詰まった、とっておきの非日常空間。

自然豊かな丸岡町山竹田の集落に、ひっそりと佇む一軒家カフェ『鈴廼園』。ハーブや季節の草花など、手入れの行き届いたガーデンを抜け、扉を開けて一歩足を踏み入れると、そこは別世界。

ハーブや植物のやさしい香りとともに、古い建具、木味のテーブル・椅子や床、白のファブリックなど、まるでヨーロッパの田舎のお家に遊びにきたかのようなシャービーで心癒される空間が目の前に広がります。

深呼吸したくなる、里山カフェ。

「昔から植物が好き、自然が好き、ハーブが好き。私の‟好き”が詰まった場所、訪れたお客様が日常から少し離れてリセットできる場所。そんなカフェを開くのが夢でした」と語る店主の斉藤園子さん。

もともと竹田地区は、園子さんのご両親の仕事の関係で、子どものころから何度も訪れている馴染みのある場所。もしカフェを開くのなら、自然が多く、広さがある場所がいいと丸岡の山の方などあちこち探しまわった結果、雪はあるけどやっぱりここがいいとこの場所を選んだのだそう。

それから園子さんの想い描くイメージを少しずつカタチにしていき、6年後の2020年7月、ようやくオープンにまでこぎつけました。「私にとって、大好きなこの場所でお店ができることがご褒美。竹田に来ると不思議と肩の力がふぅっと抜けるんです。お客様にも体感していただきたい」。

すてきな響きの店名は、園子さんの実家が営んでいた店の名前から。「祖父の代から、丸岡町のまちなかで『鈴廼園』という日本茶の専門店を営んでいて、私の名前(園子)もそこからもらったもの。だから、とても愛着があったんです」。

滋味豊かなランチやスイーツに、お腹も心も満たされて。

お店のコンセプトは、「自然の恵みで心とカラダを癒す」。こちらで味わえるのは、福井県内の無農薬野菜を中心に、さまざまな無農薬ハーブなど、滋味豊かな素材をふんだんに使って、ていねいに作られた身体が喜ぶ「ヘルシーランチ」(1日10食限定・予約可)。

また、竹田で無農薬栽培しているハーブの王様ホーリーバジルや、季節によっては朝摘みの自家栽培のハーブを使った月に4回だけのとっておき「ハーブ料理のプレートランチ」(1日10食限定・予約可)も登場します。
提供日はHPやインスタでお知らせしていて、毎月、登場を楽しみにしている常連さんもいる人気のメニューです。

自然の音色をBGMに「何もない」を楽しむ幸せな時間。

季節の果物がのった「ワッフル」や「シフォンケーキ」など、園子さんが腕を振るう無農薬の米粉を使ったグルテンフリーのデザートや、無農薬のハーブティーも女性に喜ばれています。

やわらかな日差しが入るテーブル席や、四季折々の里山の風景をひとりじめできるカウンター席、小上がりの和室など、思い思いのお気に入りの席に座り、食事やデザート、自慢のハーブティーを味わい、何もない田舎のスローな時間を心ゆくまで…。春や秋など気候のいい時期は、外のテラスに出てハンモックに揺られたり、自分で摘んだガーデンの草花を入れたアロマバスに癒されたりするのも素敵です。忙しい日常を忘れて、ホッとひと息つく、自分のためだけの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

料理も体験も小旅行も、古民家レストラン『らんたん』

食事とアクティビティ体験で、南越前町を満喫しよう。

越前屈指の宿場町として繁栄した、南越前町の今庄宿。その近くに、古民家レストラン『らんたん』があります。ここでは地元の浜・里・山の恵みを活かした料理をはじめ、満点の星空にランタンを打ち上げる幻想的な体験や、今庄宿の歴史・文化にふれあう小さな旅が楽しめます。

店主の深尾和宏さんは、実は一般社団法人地域・観光マネジメントの福井オフィス長。旅行代理店での経験を活かし、2021年に食と観光を堪能できる『らんたん』をオープンしました。「これからは個人のお客さまを対象に企画を提案したいと思い、食事だけではなくアクティビティな体験もできるレストランを始めました。南越前町は、すごくポテンシャルがある町。地元の人が、もっとその価値に気づいてくれたらいいなと思います」と深尾さんは語ります。

築100年の古民家を移築した店内は、大きな窓の向こうに緑が広がる開放的な雰囲気。庭の奥にはJR北陸線があり、時折電車が通ります。春から秋の間は、食事の後にウッドデッキのハンモックを使うことができ、のどかな自然の中で心身ともにのんびりリラックスして過ごせます。

浜から、里から、山から、とびきりの旬の幸が大集合。

山あいにありながら越前海岸にも近い『らんたん』では、『浜めし うにしゃぶ』、『里めし すき焼き』、『山めし 自然薯料理』など、浜・里・山の幅広い食材を使ったごちそうが揃っています。

なかでもディナーメニューの『浜めし うにしゃぶ』は、うにと今庄の酒蔵の酒粕を使ったペーストに、旬の食材をからませて食べるという贅沢なメニュー。付け合わせには、毎朝製粉所で打つ手打ちそばや、今庄の油揚げを使ったしみしみの揚げさんの煮たのなどが並びます。さらに、追加料金で、あわびか牛ステーキを選べるといううれしいセレクトもあります。

また、2ヶ所ある囲炉裏を囲む宴会プランは、2〜10名様1グループから対応。イノシシ、シカ、鴨など季節にあわせたジビエが登場し、炭火で焼き上げる鉄板焼や大鍋料理が味わえます。今庄の地酒を飲み比べられるメニューもあり、囲炉裏の火を眺めながらおしゃべりが弾みます。

プロのコンシェルジュが企画する、観光付き食事プランも。

旅行代理店の経験が長く、ボランティアガイド団体にも所属する深尾さんは、いわばプロのコンシェルジュ。夜空を彩るランタンの打ち上げをはじめ、渓谷に舞い上がる蛍の群生を見ることができる蛍鑑賞など、年間通して多彩なガイド観光付の食事プランを企画しています。

その中で「あまり時間のない方におすすめ」なのが、鉄道遺産に登録された旧北陸線トンネル群のひとつ湯尾トンネルだそう。昔、SLが走ったという店の目の前の旧北陸線沿いに鉄道の話を聞きながら歩いていくと、ジブリ映画に出てきそうな古びた湯尾トンネルに辿り着きます。

また、お客さまの予約やリクエストにあわせて、ときには今庄宿へ足を伸ばし、北国街道の歴史散策や酒蔵見学をガイドするプチツアーを行うことも。近くにはカタクリの花などが群生する藤倉山や湯尾峠もあり、四季を感じる美味しい食事とともに、旅の楽しみは尽きません。

切れ味抜群、越前打刃物の技をキッチンに『山田英夫商店』

使い手によりそった家庭用のオリジナル包丁。

古来からの鍛造技術と手仕上げの技を受け継ぐ、越前打刃物。その歴史は約700年前の南北朝時代まで遡ります。そんな越前打刃物の伝統が残る越前市で、『山田英夫商店』は刃物の製造卸業の傍らオリジナル包丁『風味絶佳ECHIZEN(ふうみぜっかえちぜん)』を7年前に開発しました。

開発を手掛けたのは、店主の西本さんご夫婦。「これまで越前打刃物の包丁はシェフや板前さんなど料理人対象の業務用として高く評価されてきました。この切れ味でもっと料理を楽しんでもらえるような包丁を作りたいという気持ちがありました」と奥さまは振り返ります。

『風味絶佳』の名称には、「日本には四季折々の食材があり、世界遺産に登録されるほど豊かな食文化がある。そうした食材の風味を盛り立て、楽しく料理する名脇役となる包丁であってほしい」という、おふたりの想いが込められています。

ふたつとない波紋、利き手を選ばない柄。

強くしなやかなブレード(刃)と、使いやすさにこだわった柄を持つ『風味絶佳ECHIZEN』。高級ステンレスVG10を用いたブレードは、錆にくく、切れ味長持ち。片面16層のパイ生地のような特殊な素材を鍛錬することで、同じものはふたつとない波紋が表面に広がります。

「越前では、刀鍛冶の製法を学んで包丁を作ったといわれています。真ん中の硬い鋼を両サイドから少しやわらかい金属で挟み込こむことで、折れるのを防ぎひずみを調整して、切れ味の良い包丁を作りあげてきました」と奥さま。

樺の積層強化材を使った流線型の柄には、西本さんのこだわりが。「包丁は両刃なので、右利きでも左利きでも使えるように」と、和包丁の柄にあるしのぎを参考に柄の中央をふくらませることで、どちらが利き手でもしっくりと掌に馴染むカタチを目指しました。上から見て木目が楕円に広がる美しい配置も秀逸。1本1本、手間と時間をかけて丁寧に手作りしています。

ギフトに、自分用に、長く使える良い道具を。

刃物には「魔を断ち切り、良い未来を切り拓く」という縁起の良い意味もあり、結婚や新築祝いなどの贈り物としても人気です。こちらのお店では、無料にて名入れのサービスもあります。「最近はコロナ禍で家時間を充実させたいと、自分のために買われる方も増えていますね」と奥さま。毎日の料理を楽しめるよう三徳、中三徳、ペティ、薄引、洋出刃の5種類を用意。「ご家庭なら、これだけ揃えれば充分」と笑顔で太鼓判を押します。

赤または深緑の高級感ある専用パッケージは、牛乳パックの廃材を活用したもの。包丁のお手入れに使えるオリジナル手ぬぐいと1回分の無料研ぎ直し券が同梱されています。研ぎ直しに出される際には、この専用パッケージに入れて安全に送ることができます。「どんなに良い包丁も使っていくうちに切れなくなるので、メンテナンスしながら長く使ってほしいですね」。

HPでも購入可能ですが、「できれば、お店で説明を聞きながら、実際に手に持って選んでいただけたら」と奥さま。『山田英夫商店』併設のショップでは、西本さんお手製のまな板にも皿にも使える『桐の八角まな板』も入手できます。ぜひ、自分の手で使いやすさを実感してみて。

江戸前の技で、日本海のとれたての魚介をいただく『幸寿し』

素材の良さに自信あり、親子2代にわたる江戸前寿司。

福井市中心部の松本通りに店を構える『幸寿し』。昭和43年に開店し、親子2代にわたり江戸前寿司を提供しています。暖簾をくぐって引き戸を開けると、そこは一枚板のカウンター越しに和やかな会話が弾む、昔ながらの風情ある空間。2階は落ち着いた雰囲気の和室にテーブルと椅子が置かれ、カジュアルなスタイルでお寿司をいただけます。

「江戸前の寿司は、魚の美味しさを引き立てるもの。素材の良さには自信があります」と胸を張る2代目の長井慎二さん。福井ではあまり見られない江戸前寿司は、新鮮な魚をただ切って使うのではなく、ひと手間かけるところが特徴です。塩や酢で〆たり、熱を加えて煮たり、醤油や煮汁に漬けたりすることで、素材の旨みを引き出しています。

「福井は魚が美味しいのでなるべく手を加えないようにしていますが、例えば、季節によって脂がないものとかは、スダチを搾って酸味をきかせるなどすることで味が美味しくなりますね」

季節の旬のネタと美味しいお酒で、至福のひとときを。

カウンターの透明なネタケースには、季節の旬のネタがズラリと並びます。「福井は四季ごとに美味しいものがあるので、なるべく日本海でとれたての地のものを使いたい」という長井さん。仕入れは仲卸以外に、自ら市場の二番競りにも足を運んでいます。「見た目は同じでも、脂ののりとかまったく違う。日々新しい魚と出合うので、毎日が修行です」

店のおすすめは、季節によって異なる8種類のネタが味わえる『おまかせお寿司』。イカ、甘エビ、イクラの醤油漬、ウニ、トロ、赤身、コハダ、アナゴなど、新鮮な旬のネタはどれも赤酢を使ったシャリと相性抜群。素材の良さを生かした、江戸前寿司ならではの細やかな職人の仕事が施されているので、醤油などつけずそのままで至福の味わいを堪能できます。

お寿司にあうお酒のラインナップも充実。福井の地酒をはじめ、ワイン、焼酎も人気だそう。「今はお酒の種類が多く、お客さまに教えてもらうことも多いですね」とほほ笑みます。

アットホームな雰囲気で、江戸前を美味しくいただく。

東京と福井で修行を重ね、会席料理も学んだ長井さん。店では一品料理や会席料理も提供していて、だしの香りとトロトロの食感がやみつきになる『れんこん饅頭』は定番人気だといいます。

寿司屋というと敷居が高く緊張するイメージがあるかもしれませんが、家族で営む『幸寿し』はアットホームで温かい雰囲気。「お箸は使わず、手でつまんでどうぞ」、「ショウガは味をキレイにするためのもの。お寿司の合間に食べると、前の味を消してくれますよ」など、長井さん親子や奥さまのやさしい声かけが緊張をほぐし、リラックスして美味しくお寿司を楽しめます。

「初めての方は、〝美味しいものをお願いします〟と素直に声をかけてください。おまかせを召し上がっていただいた後に、好きなネタを楽しんでもらえたら」と初めての寿司屋の極意も教えてくれました。「美味しさの決まりごともありますが、楽しい時間を過ごしてもらえたら、それが一番ですね」と穏やかな笑顔が広がります。

家庭薬膳で、女性の元気ときれいをつくるカフェ『Re echo』

それぞれの季節にあった、女性のための家庭薬膳。

多彩な店が並ぶ福井市高木中央にあるカフェ『Re echo』。店主の青山理恵子さんの「女性が自分の心と身体に向き合えるお店をつくりたい」という想いから、家庭薬膳・メディカルハーブティー・保健室カフェの3つをコンセプトに昨年オープンしました。

青山さんが手がけているのは、「病気になりにくく、健やかさと美を備えた体をつくるための家庭薬膳」。四季のある日本では季節ごとに身体に負担のかかる部分も変わるため、それぞれの季節の食材のもつ効能を活かしながら、負担のかかる部分を補っていくというメニューづくりをしています。

1日限定20食のランチは、春(青)・夏(赤)・秋(白)・冬(黒)と季節の変わり目にあたる土用(黄)という5つの季節と色をモチーフに考えられています。例えば、『肝』に負担がかかる春は、緑の野菜が多めのデトックスランチを提供。「家庭薬膳はまず美味しいこと」を前提につくられた5色+αのメニューは、どれもとびきりの味わいです。ごはんには福井県産コシヒカリの玄米に、美肌ケアにつながるハトムギをプラス。「薬膳は、その地でとれたものを食べることが大事。福井は食材が豊富でありがたいですね」とほほ笑みます。

オリジナルのハーブティーで、ゆっくりリラックス。

ランチでも提供しているメディカルハーブティーは、シニアハーバルセラピストの資格を持つ薬剤師が監修したオリジナルブレンド。ワイルドクラフトハーブを使っているので、安全性が高く、味も香りも極上です。美肌やアンチエイジング向けの『女っぷりを上げたい』、冷え症改善につながる『冷たい女と言わせない』など、わかりやすくユーモアのあるネーミングも好評だとか。

福井県産ナツメ入りの『薬膳チョコケーキ』や、福井の酒蔵の酒粕を使った『酒粕バナナケーキ』など、米粉を使ったノンバターのスイーツも人気。オリジナルのメディカルハーブティーは店舗で販売もしていて、オーツミルクといったオーガニックな食材も並びます。

店を訪れるお客さまは40〜70代の女性がメインですが、週末には若いカップルも来られるのだそう。心と体にやさしいメニューでゆっくりリラックスすれば、自然と元気が湧いてきます。

自分の体に向き合うきっかけをつくる保健室カフェ。

「女の人は妊娠・出産、子育て、仕事や親の介護に追われ、自分の体を見つめる時間がすごく少ない。どこかつらくても後回しにするところがあり、気づいたら体や心が病んでしまっている。そうならないよう、自分の体に向き合う時間をつくってもらえたら」という青山さん。

看護師の資格も持つ青山さんがお店を開いて一番やりたかったことは、「女性のための保健室カフェ」だといいます。これまでインスタなどで参加者を募り、助産師、看護師、整骨院の先生といった幅広い専門医をカフェに招いて、テーマごとにいろいろな話をしてもらいました。

「医療関係の方と直接話をする機会は、病院に行かない限りなかなかない。保健室カフェでの交流が、自分の体に向き合うきかっけになれば」と想いを語ります。開催は不定期で、コロナ禍でしばらく休んでいましたが、今年春から再開予定。「その中で、何か体験的なこともやっていけたら」と青山さん。女性にうれしい新しい取り組みが、またひとつ増えそうです。

歴史が生み出す風情と最先端の食の調和『おりょうり京町 萬谷』

大切なものは守りながらも、大胆に進化する。

石畳の街並みが艶やかな風情を醸す、越前市武生地区の寺町通り。その一角に佇むのが『おりょうり京町 萬谷』です。「昔、武生地区には国府があり越前国の中心だったため各種職人達が集まり、寺社仏閣がひしめき、料亭文化が花開きました。今でも街並みを見ると、その心が受け継がれているのが分かりますよね」と店主の萬谷知士さん。脈々と受け継がれる文化を大切に守っている“職人”の一人です。

しかし、ただ守るだけでは時代に取り残されてしまうもの。そこで近年は、和食の味や技法をベースとしながら、ガストロノミーの考え方を取り入れた“これまでにない懐石料理”を追求しているといいます。「ガストロノミーとは食と文化の関係を考察することですが、その起源であるフランスの食文化をはじめスペインやイタリアなど多様な考え方を取り入れています」。中には進化具合に驚きを隠せないお客様もいらっしゃる、と優しく笑います。

四季をふんだんに取り入れ、季節の移ろいを感じさせながらも、従来の和食に捉われ過ぎない味わいの数々は、まさにその日その時『萬谷』でしか出合えません。古今東西の叡智が凝縮している“これまでにない懐石料理”は、感嘆を持って丁寧に感じ取りたい繊細さに満ちています。

味に深みを加えるのは、伝統と文化。

『萬谷』の夜は3種の懐石から選べますが、特に噛みしめたいのはお肉とお造り。
「天皇の料理番として名高い秋山徳蔵氏は武生地区の出身ですが、彼が好んで用いていたことを受けて当店でもジビエをご提供しています。例えば鹿肉。クセがなく、ローストビーフなどでも食べやすいと好評です。またお造りでは、魚ごとに皿を分けてお出ししています。というのも、塩やポン酢、オリーブ醤油や山葵マヨなど、それぞれの魚にあった調味料をご用意しているので、じっくり味わっていただきたいのです」という心遣いがたまりません。驚きの詰まった新しい和食に、自然と顔がほころんでしまいます。

また、五感をフル稼働させて楽しむ料理は器との調和も重要な味わいの一部。「武生地区のある丹南はものづくりの町であり、越前焼きや越前打刃物は大切な伝統工芸です。しかし昔のままでは、今の料理に合わないことも。幸い、越前焼きは作家さんによって作風が全く異なるので、和を引き立てつつも今の料理に合うような作陶をお願いしています」。
たゆまぬ進化への挑戦と伝統の継承によって、過ごす時間さえも深く価値あるものにしてくれるのです。

時代が進む。おもてなしも進む。

これまで、接待など“特別な日”の利用が多かった『萬谷』ですが、近年は個人客の利用が伸びているといいます。
その変化を受けて、「コロナ禍は、良くも悪くも転換期になりました。自分なりのこだわりをしっかり持っていらっしゃる方・食の変遷に敏感な方などのご来訪が増えたと感じています。今後はそういう方にもご満足いただけるよう、萬谷ならではのおもてなしを加味した今までとは違う形・スタイルでの食のご提案ができたらと考えています」と萬谷さん。
日々躍進を遂げる料亭の味とおもてなしが、これからの大人の愉しみに一陣の風をもたらします。

茶の湯のおもてなしを心ゆくまで楽しむ『むつのはな』

週3日、ここでしか味わえない料理を追求する。

坂井市丸岡町にある一軒家の民家で、週3日限定でオープンする『むつのはな』では、茶懐石を軸に和洋問わない料理スタイルで、福井の旬の食材をふんだんに使ったコース料理を出しています。

店主の五十嵐美雪さんは、京都で日本料理、東京では星付きレストランでイタリアンの修行を積んだ料理人。これまで培ってきた和食やイタリアンの技術に加え、長年習得してきた茶の湯の文化を取り入れた “ここでしか食べられない料理”を提供してくれます。

かつて国会議員だった酒井利雄氏の邸宅を活用した店舗は、歴史を感じる建物の趣も楽しめます。9席のカウンターのみの店内では、五十嵐さんの丁寧な仕事を拝見する時間も楽しみの一つ。一皿ごとのストーリーや想いを聞きながらいただくことで、その余韻がいつまでも残ります。

極上の味わいを堪能できる熟成肉のステーキ。

席に着くと、まず出されるのが季節のお茶。ほっと一息ついたところで、旬の食材を使い、中医学の考え方である辛(しん)、苦(く)、甘(かん)、鹹(かん)、酸(さん)の五つの味わいに分けた「五味の膳」が一皿ずつ丁寧にサーブされていきます。

食材は基本的に地ものにこだわり、食材を選びながらメニューを考えるという五十嵐さん。「テロワールを感じられるものを中心に、信頼できる生産者さんを開拓しながら自分が納得できるものを仕入れています」と語ります。

なかでもぜひ味わいたいのが、肉料理で出される熟成肉のステーキ。多くの料理人が取引きしたがるという滋賀県の精肉店「サカエヤ」の肉職人、新保吉伸氏が手当した貴重な熟成肉を、『むつのはな』では枝肉で仕入れています。ほどよいレア感を残しながら焼き上げたお肉はサーロインでありながらも重たくなく絶品。高齢の方も完食してしまうほどの味わいと柔らかさを誇ります。

食材のストーリーを引き立てる漆器の数々。

「素材や味わいの奥深さを堪能していただくのはもちろんですが、ぜひ器も手に取っていただきたいですね」と語る五十嵐さん。器は鯖江市河和田でつくられた越前漆器が中心。職人の手仕事や技術の高さに惚れ込み、五十嵐さんが少しずつ集めたこだわりの器が端正な料理を引き立てます。

食材と技術、そして器により完成された『むつのはな』の料理。締めくくりに丁寧に点てられた一服の薄茶をいただくことで、これまで以上に茶の湯の心を感じられるかもしれません。お茶にはじまり、お茶に終わる至福の時間。丁寧に調理された素材の本質を味わえる料理の数々をぜひお楽しみください。

『酒粕足湯』26日のみ中止のお知らせ

本日北ノ庄城址(柴田公園)にて開催予定だった第37回ふくい桜まつり「ふくい桜城下町」関連イベント『酒粕足湯〜酒粕の足湯と足揉みでキレイに〜』は、暴風警報発令により、本日26日のみ中止となりました。

ご予約をいただいていた皆様、ご予定を立てていただいた皆様、大変申し訳ございません。

なお、明日27日(日)は予定通り開催予定です。
是非、柴田神社まで足をお運びください。

【酒粕足湯と足揉みセット】
 利用料:お1人様 1,000円
 利用時間:30分(酒粕足湯15分・足揉み15分)
 ※酒粕足湯と足揉みはセットとなります。どちらかのみのご利用はできません。

・違うグループとの相席は不可となります。
・足湯は30cm程となります。
・足揉みは、会場内で実施します。※店舗はお選びいただけません。
・1日最大120名までのご利用となります。
・ご予約は当日会場にてのみとなります。

【着物でまち歩き】※事前予約制
 利用料:1,000円(着付け込み)
 利用時間:2時間

セパレート着物をレンタルして、 春の福井駅前をお散歩しませんか?
着物を着用のまま足湯のご利用も可能。
下駄も準備しますので 手ぶらでOK。
着物の柄もお選びいただけます。

着物レンタル予約はこちらから https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/020d7abakb721.html
※男性・お子様の着物はございません。

お花見で歩き疲れたら、ぜひ北ノ庄城址へお立ち寄りください。

『旬味 泰平』 本当に美味しいものは季節の香りを纏う

福井人の心のふるさと。

気軽に美味しいものが食べられる『旬味 泰平』は、福井で人気の高い日本料理店のひとつ。福井駅前の「浜町」と呼ばれるエリアに位置し、「ここに来れば間違いない」と市民の胃袋を掴み続けています。趣ある店内は古民家風の造りになっており、どの場所も不思議と心が落ち着きます。入口すぐの調理場では煮方や焼方など多くの料理人がテキパキと動いており、注文から料理が運ばれてくるまでの待ち時間に、その手際の良さを堪能できるカウンターはまさに特等席です。

総指揮を執るのは、店主の杉田泰英さん。いつも柔和な杉田さんですが、味のチェックの際は眼光鋭い職人の顔になります。「福井人で良かった」と思わせてくれるあの味わいは、紛れもなく職人達の手仕事の積み重ねから生まれています。

シンプルな見栄えに隠された、丁寧な仕事の奥深さ。

根強い人気を誇る『泰平』のランチ。その日の仕入れによって内容が変わる日替わり定食は、入口の黒板での確認をお忘れなく。焼く、煮る、揚げるなど素材に合わせた調理法で提供される魚料理はもちろん、丁寧に作られた小鉢にも心が弾みます。出汁がききつつも後口すっきりのお味噌汁が全体の流れを整え、箸が止まらなくなることでしょう。他にも天麩羅定食やあんかけ定食などがあり、気分によって選べるのは嬉しい限りです。

夜の楽しみは、100種類以上もの豊富なメニューから好みの一品を見つけること。特に魚介類の美味しさは折り紙付きですので、ぜひご賞味ください。その際、お刺身なら醤油にもご注目を。全国から選び抜いた醤油を独自の配合でブレンドした自家製の合わせ醤油は、北陸の魚介にぴったりだと好評です。また炭火で焼き上げられた魚もたまりません。芳ばしい香りと絶妙な焼き加減に、たちまち虜になってしまうこと間違いなしです。

さらに昼夜を問わず人気なのが『蓮根まんじゅう』。単品で追加する人も多いメニューです。外はカリっと芳ばしく、中はふわふわ。時折感じるシャキシャキとした食感が楽しく、添えられた地辛子が風味を高めつつ全体を引き締めてくれます。心地よく沁みわたる出汁のきいた餡との調和をお楽しみください。

ホッとしたい日、大切な日。折々に来たくなる店。

これからも「手をかけない、自分をなくした料理を目指していきます」と杉田さん。それはつまり余分なことをせず、ストレートに素材を味わう料理を作っていくということに他なりません。何年経っても変わらないこの信念こそが、優しくも確かな味わいを支えているのです。

お品書きに見る手書きの文字や、器やつまようじ入れの金継ぎなど、要所要所に丁寧さを感じる店内。一人でも、気の置けない仲間とでも、心を満たしたくなった時に訪れたい店です。

地のものにこだわる料理『紋や』で、福井を味わい尽くす

地のもの、地の酒、地の器、福井を味わう和の料理。

地のもの・地の酒を中心に、素材の旨みを引き出した和の料理が味わえる『紋や』。器も地のものにこだわり、約8割が福井の伝統工芸品である越前焼を使用。店内は一枚板のカウンターや杉のテーブルなどが置かれ、和モダンな室礼とあいまって居心地のよい雰囲気を醸しています。

「福井の食材は、和食の料理人としてどれも魅力的」と語る、店主の向山宏徳さん。魚は天然ものだけを扱い、「自信をもってお出ししています」と胸を張ります。鮮度を保つ効果のある神経締めを行う地元の漁師から直接仕入れ、「その日の魚を見て、熟成させるものは熟成させ、すぐにお召し上がりいただきたいものは新鮮なままでお造りにするなどしています」といいます。

活きのいい魚貝を始め、若狭牛、野菜、果物、日本酒なども、もちろん地のものがメイン。「野菜は、地元の若い農家さんから仕入れています。地酒も、最近は世代交代した若手の酒蔵さんが頑張っていて、県外からのお客さまも〝美味しい〟といってくれます」とうれしそうに語ります。

こだわりのだしが引き出す、福井の食材の旨み。

新鮮な福井の食材の旨みを極限まで引き出すのは、向山さん自慢のだしです。和の料理で味の基本となるだしは、化学調味料は一切使わず、2種類のかつおと昆布を使用。「だしはシンプルだからこそ難しい。素材選びや調理のタイミングを吟味し、工夫を重ねています」と向山さん。

四季それぞれに5種類程用意される人気の創作料理も、だしの魅力を際立たせたものが多いそう。だしの旨みが香り立つ『かに飯蒸し(いいむし)』、からしやわさびをスパイスに米酢を使った『かにとアボカドのサラダ』は、どちらも贅沢な冬の人気メニュー。通年で出される『豚角煮ばれいしょあん』は、じゃがいもの原種に一番近いとされるインカイモを用い、じっくり8時間かけて豚肉をとろとろに煮込んでいます。

さらに、コース料理の締めにも欠かせないのが『紋やのうどん』です。福井の製麺所で作るオリジナルの細平麺は、自慢のうどんだしで「食後さっぱりと食べられる」と多くのファンがいます。

「また福井にきたい」と思ってもらえる味わいを。

『紋や』は、2001年に浜町で開店。今年、20周年という節目の年を迎えます。「福井で修行を重ね、浜町の趣のある魅力にひかれ31歳で開店しました。店名は祖父の〝紋作〟という名からもらいました。料理もでき、苦労して実家を支えてくれた方なんです」と向山さん。「手間ひまをしっかりかけるのが和食の一番大事なところ」と、創業以来、和の美味しさを追求しています。

落ち着いた佇まいと新鮮で品のある味わいにひかれ、お客さまは30代から80代まで幅広いそう。「女性ひとりでこられる方もけっこういらっしゃいます。越前ガニや桜の時期は、県外から来られるお客さまも多いですね。北陸新幹線延伸開業が控えていますし、ぜひまた福井に来たいと思ってもらえるような、ここでしか味わえない味を出していきたいです」と意気込みます。

コロナ禍で始めたお弁当も好評。『ふくい春まつり』でも出店しているので、足羽川沿いに連なる桜並木を眺めながら、福井の美味しさが詰まったお弁当を堪能するのも風流かもしれません。

扉を開くきっかけと出会う、懐かしくて新しい『ポルタの喫茶室』

海の近くで、昭和のノスタルジーを感じる喫茶室。

坂井市三国町、海につながる坂道の途中に『ポルタの喫茶室』はあります。扉を開けると、そこは不思議な懐かしさを感じさせる居心地のいい空間。カウンター、おひとりさま席、テーブル席があり、ひとりでゆっくり本を読んだり、友達とのんびり話をしたり、思い思いにくつろげます。

店名の『ポルタ』は、イタリア語で「入り口、扉」を意味する言葉。そこにはオーナーの木部一気さん・愛莉さんご夫婦の「自分のやりたいことや新しいことを始める、いろんな人たちの〝きっかけ〟や〝入り口〟となって、地元を盛り上げていけたら」という想いがあります。

古い本棚、ガラス器をリユースしたペンダントライトなど、店内は昭和のノスタルジーがあちこちに。「僕たち20代後半の世代にとって〝喫茶店〟はあまり行ったことのない憧れの存在。そこにスペシャリティコーヒー専門店をかけあわせ、新しい雰囲気をつくれないかなと思いました」と一気さんはいいます。

スペシャリティコーヒーを通し、自分と向き合う。

木部一気さん・愛莉さんご夫婦は、ふたりとも三国生まれ。それぞれ東京で活躍し、結婚後Uターンして昨年7月に『ポルタの喫茶室』をオープンしました。一気さんはコーヒーマイスターの資格を持ち、愛莉さんはベビーシューズをはじめとする革小物作家としても活動しています。

個性が際立つ自家焙煎のスペシャリティコーヒーと県外ロースターからセレクトした豆を常時8種類用意。独自のブレンドを置かない理由は、「ブレンドを置くと、お客さまは『いつもの』と頼むことが多くなってしまう。そうではなくて、自分の好きな味を見つけたり、この豆はこんな味なんだと思ったり、ワクワクしながら挑戦してほしい」と一気さん。「コーヒーは嗜好品」と語り、メニューには豆のチャート表とそれぞれのフレーバーが詳しく紹介されています。

コーヒーへのこだわりには「自分自身と向き合い、忙しい中で忘れてしまいそうなことを見つめなおす時間にしてほしい」という、一気さんの想いが。さらに、「そうしていろんな思いで集まった人同士が自然とゆるやかにつながっていける場所になれたら」と愛莉さんはいいます。

定番の喫茶店メニューが人気。ワークショップも計画中。

オープン以来、幅広い世代から愛される『ポルタの喫茶室』。一番人気は、パン屋で1年修行した一気さんが毎朝焼きあげる自家製厚切りパンを使った『トーストモーニング』。セットのコーヒーは、その日の気分でビーンズメニューから好みのスペシャリティコーヒーを選べます。

ランチメニューは、〝ザ・喫茶店〟な定番メニューが話題。目玉焼きをのせた熱々の『昔懐かしいナポリタン』や『珈琲屋のライスカレー』など、「お店を普段使いしてほしいので、写真映えする派手なものではなく、毎日食べてもあきないものを心がけています」と愛莉さん。

店内では、愛莉さんが作るベビーシューズなどのレザーアイテムや自家焙煎豆のドリップコーヒーも販売。コーヒーの淹れ方体験やものづくりのワークショップも開く計画です。自宅で本格的なコーヒーを淹れる、新しい趣味を始める…、それぞれの席に置かれたホテルのキーを模した席番を手に、あなたも新しい扉を開いてみては。

大正時代の町家を再生したフレンチレストラン『S’Amuser サミュゼ』

地元を愛するシェフが腕をふるう“三国フレンチ”。

昔ながらの古い建物や風情あふれる町並みを残しながら、新しいお店が誕生し続ける三国湊きたまえ通り界隈。そこに、地元・三国を愛するシェフが腕をふるう、町家フレンチレストラン『S’Amuser サミュゼ』があります。

西洋料理の最高峰「世界料理オリンピック大会」で、個人の部3位入賞を果たすなど、数々の受賞歴を持つオーナーシェフの畑和也さんは、生まれも育ちも生粋の三国っ子。「お店を出すなら、やっぱり地元がいい」という想いから、三国運動公園近くに最初のお店を構えました。甘エビやカニ、ハタハタ、サザエ、ワカメといった旬の魚介や農家さんから届く地の野菜などなど。アミューズからメインまで、地の食材の香りや食感をいかした、三国らしいフレンチに出会えると、評判を呼び、地域の人たちから愛される一軒へと成長しました。

馴染みのある地域で店を構える喜び。畑シェフの第2章、始動。

オーナーシェフとして自分の店を構え、理想の料理や食空間を追求することに日々やりがいを感じていた畑シェフ。そんなとき、坂井市による古民家再生事業の公募の話を耳にし、移転の決断をすることに。

「この界隈は、子どものころから毎日遊んでいた場所ですし、この建物も私にとってとても身近な存在でした。生まれ育った馴染みのある地域に根を下ろす、またとないチャンスだと思ったんです」と畑シェフ。こうして、湊町・三国を象徴する存在だった『旧大木道具店(骨董店)』の大正時代の古い建物をリノベーション。外観は大正時代の町家の趣を残しながらも、内装はモダンでシックな食空間へと生まれ変わりました。

三国を感じ、三国を楽しむ。ここでしか味わえない料理を届けたい。

『サミュゼ』とは、フランス語で「楽しむ」ということ。「会話、料理、盛り付け、景色、雰囲気……すべてにおいて、訪れたお客様が楽しんでいただける場所でありたい。そして、自分自身も日々の暮らし、お客様との出会いやご近所さんとの交流を楽しみたい」。そんな畑シェフの想いが込められています。

地元・三国やあわらの食材を中心に、素材の美味しさをまっすぐに引き出した畑シェフ渾身の料理を、昼はランチコース、夜は季節のコースやアラカルト(要問合せ)で提供。肉も、魚も、野菜も、火入れ加減をベストな状態で、テーブルへと届けてくれます。なかには、福井の笏谷石や越前焼のオリジナルの器に盛り付けた、繊細で美しい一皿も。ライブ感あふれるカウンター、庭の緑を望みながら食事が楽しめるテーブル席、まるで迎賓館のような非日常感あふれる2階フロアと、座る席ごとに楽しみが待つ空間で、ワインを片手に、心ほぐれる至福の時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。